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襖のWEB辞典

この『襖のWEB辞典』は、東京内装材料協同組合が、平成2年12月に創立70周年記念事業として企画・発行した『襖考』の記事の一部を、WEB用に編集したものです。

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 和襖の下地骨
 襖紙の貼り方





和紙襖紙
紙に用いられる和紙は、伝統的な手漉き技法(流し漉きなど)によるものと、特殊な抄紙機による機械漉きのものがあります。鳥の子については、手漉きのものには語頭に「本」の文字をつけて「本鳥の子」、機械漉きのものには「鳥の子」と区別しています。

(1)本鳥の子【ほんとりのこ】
本来は雁皮(がんぴ)紙をさし、その色合いが鶏卵の殻の淡黄色に似ているところから鳥の子と呼ばれました。その無地の肌合いは雁皮独特の柔らかい光沢をもち、和紙を代表するものです。三椏(みつまた)紙は雁皮紙とともにその優しい紙肌から、襖はもとより写経用紙、料紙など古来よりさまざまな用途に用いられてきました。本鳥の子は紙料によって、特号紙(雁皮紙)・一号紙(雁皮+三椏)・二号紙(三椏)・三号紙(三椏+パルプ)・四号紙(マニラ麻+パルプ)の種類があります。伝統的な手漉き和紙で襖紙の代名詞ともいえます。経年による鳥の子の肌は独特な風合いを保ち、むしろ新しいものより上品な肌合いになります。施工に際しては、上質な鳥の子ほど紙の性質は強く、下地骨・下貼りなどに充分な配慮が必要です。

(2)鳥の子【とりのこ】
本鳥の子が手漉きでつくられるのに比べ、鳥の子は抄紙機を用いて漉きます。紙料はさまざまで、本鳥の子と同様に靱皮繊維(雁皮や三椏)を使ったものから、パルプだけのものまであります。上質なものは手漉きの風合いをつくりだすため、非常に緩慢な速度で漉きます。このため繊維の絡みや紙の肌合いが手漉きにちかいものができ、その均質さから用途によっては手漉きより、好まれることもあります。また、漉き染めした鳥の子(色鳥の子)は色数も豊富で、現代の住空間はもとより商業空間にもよく使われます。そのほか、抄紙技法や紙料によってさまざまな無地鳥の子がつくられています。

(3)麻紙【まし】
麻を紙料として漉いた和紙で、麻の繊維は長く強靭なため古来より重要な文書などによく用いられました。近年、書道用紙や日本画用紙として見直され、数多くの作家の作品に用いられています。麻紙は、襖紙にも肉筆画を施す際によく使われ、また、紙表に美しい雲肌をつくれるため、無地としてもよく用いられます。襖紙としては、礬水引きを施して用います。

(4)楮紙【こうぞし】
雁皮・三椏とならび伝統的に用いられた和紙で、楮を紙料として漉いた和紙。和紙の中でも最も強靱で、その風合いは独特で男性的なものがあります。このため生漉きのものだけでなく、他の紙料と漉き合わせて楮の特徴を生かしたものも多くつくられています。また、楮の黒皮(外皮)を装飾として漉き込むこともあります。

(5)本鳥の子漉き模様【ほんとりのこすきもよう】
すべて手漉きによって漉き込み模様をつけたものです。下地になる和紙の層と模様をほどこす表の層(上掛け)に分けられます。表の層は主として三椏や楮などの紙料で、流し込みなどのさまざまな技法により模様がつけられます。手漉き独特の風合いを持ち、手漉きならではの高級感とボリューム感を表現できます。

(6)鳥の子漉き模様【とりのこすきもよう】
下地になる和紙を抄紙機で漉き、表の層(上掛け)の模様は手漉きと同様な技法で製作します。本鳥の子漉き模様と同じような紙料を用いますが、下地を抄紙機でつくる分、価格的に安くなります。模様は手漉きのため柔らかな表現ができ、伝統的なさまざまな技法で多彩な模様が施されます。

(7)上新鳥の子【じょうしんとりのこ】
鳥の子の普及品で、紙はすべて機械漉きのため比較的低価格で均質、という特徴をもちます。鳥の子の肌合いを生かした無地、機械漉き模様、後加工による模様付けなど、和紙の襖紙の中では種類が最も豊富です。これらの特徴から、一般住宅や集合住宅などによく用いられ、名称を略して「上新」とも呼ばれています。

(8)新鳥の子【しんとりのこ】
襖紙の中で最も廉価で、製紙から模様付けまで一貫して機械生産されています。紙は主として特殊な抄紙機で漉いた再生紙を用い、特殊輪転印刷機による模様付けの後、エンボス加工が施されます。模様(絵柄)は一般的に使いやすいものが多く、施工性も考慮したデザインを施しています。このため、量産性と施工性の良さが相まって公団住宅、民間賃貸住宅などに最もよく用いられています。下地の透き止めのため紙裏が茶色のものが多く、「茶裏」とも呼ばれています。
織物(天然素材)の襖紙
織物は伝統的に用いられた天然素材のものと、主として合成繊維を用いたものとに分けられます。天然素材のものは主として高級な無地として用いられますが、素材の性格上、合成繊維に比べて一枚ごとに織り上がりの風合いが違います。この変化が天然素材の面白さといえます。

(9)葛布【くずふ】
葛の繊維を横糸(緯糸)に用いて織ったもので、強靱で耐水性に富んでいます。昔は縦糸(経糸)に絹や麻を使い葛袴などの衣料としても用いられましたが、その丈夫さと野趣に富む風合いから襖紙、表装裂地、壁紙などにも使われています。古くから掛川(静岡県)でつくられています。

(10)【きぬしけ】
繭の外皮から引き出したあら糸を横糸にした絹織物で、このため糸そのものの不揃いさや打ち込みの不揃いさが、独特の風合いをつくっています。また、さまざまな色に染められ、絹の柔らかな光沢を引き立てます。手織りのものと機械織りのものがあります。昔は屏風などにもよく用いられ、また壁紙として欧米にも輸出されました。

(11)芭蕉布【ばしようふ】
本釆の芭蕉布は、縦糸に木綿や麻糸、横糸に糸芭蕉の繊維を用いていました。沖縄を主産地とし、古くから貢納布として織られ衣料として使われてきましたが、その張りのある風合いから、上質な襖紙としても用いられています。現在はその風合いを麻糸などを用いて表します。

(12)シルケット
横糸を麻、縦糸を木綿で織ったもので、平滑で滑らかな風合いが好まれ、天然素材のものの中では最もよく使われてきました。〔糸の打ち込み本数は、縦糸は双糸23本/インチ程度、横糸は32本/インチ程度のものが多い〕
織物(合成繊維)の襖紙
(13)上級織物
織物の中では高品質なもので、施される模様(絵柄)も手加工による凝ったものが多くつくられています。主としてドビー織りなど縦糸・横糸ともに糸目の詰んだ織物で、縦糸にレーヨン糸、横糸に木綿の意匠捻糸(スラブ糸、ネップ糸など)や絹などを用いて変化をつけます。〔糸の打ち込み本数は、縦糸は50本/インチ程度、横糸は40本/インチ程度のものが多い〕

(14)中級織物
一般的によく用いられる織物で、使いやすい価格と変化のある風合いが好まれています。縦糸・横糸ともにレーヨン糸がよく用いられ、最近では長繊維のレーヨン糸も使われ始めました。模様(絵柄)は手加工のものを中心にさまざまな種類のものがあります。〔糸の打ち込み本数は、縦糸は30本/インチ程度、横糸は24本/インチ程度のものが多い〕

(15)普及品織物
最も数多く用いられているもので、低価格と種類の豊富さを特徴とします。主として縦糸・横糸ともにレーヨン糸(短繊維)が使われます。模様(絵柄)は、特殊な輪転・オフセット・スクリーン印刷機などで加工されるため、画一的で無難なものが多くなります。〔糸の打ち込み本数は、縦糸は24本/インチ程度、横糸は22本/インチ程度のものが多い〕
ビニール襖紙
塩化ビニールなどの合成樹脂性の襖紙で、耐水性と汚れにくさを特徴とし、水回り、廊下側や洋間側によく使われます。模様は無地調のものが多くつくられています。