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住宅デザイン特集Part1 アクセントウォールのススメ

印象的な場所を作るとワンランク上の住空間が生まれる




フォーカルポイントを意識する
 インテリアのプロが使う言葉に「フォーカルポイント」という言葉があります。これは「焦点が集まる場所」の意で、空間の中で自然と視線を集める場所のことを指します。人には面白い習性があります。ある空間に脚を踏み入れる時、その視線は必ず入口から最も遠い場所に向けられるのです。これは無意識のうちにこれから入る場所の空間把握をするためと言われています。つまりその空間の広さや状況を一瞬にして把握し、安全性を確認してから脚が動くのです。ですから、部屋の第一印象は入口の対面(多くは入口から最も遠い場所、壁面や窓) がどのようなインテリアになっているかに懸かっていると言っても過言ではありません。また、リビングなどではソファの向い側の壁面なども視線が集中する場所です。インテリアの世界ではそのような場所にデザイン上のポイントを置くことを「フォーカルポイント」と呼ぶのです。素敵なホテルやレストランを思い出してみて下さい。必ず入口の正面 (向かい側) に大きな花や絵が飾ってあるなど、何らかのデザインが施されています。それが「場」を作るということなのです。まずは視線が集まる場がどこなのかを確認し、その場所をどう「魅せる」空間にするかを考える。これはインテリア・デザインを考える上での大変重要なポイントになります。

アクセントウォールを作る
 日当りの良い住宅地に建つO邸は、高い吹き抜け天井、ゆったりと広いリビング、キッチンとの距離感が便利な使い勝手の良いダイニングなど、恵まれた間取りのお宅です。ただし、基本プランでは壁面天井共にすべて真っ白で、ただ大きな空間が広がっているだけでした。そこで、私は空間のアクセントとなるデザインを壁面に施すことで、フォーカルポイントを作り出すことにしたのです。

〈リビングルーム〉
 窓側の柱の出幅を利用してリビングの一角に巨大なニッチを造作。
心落ち着く優しいグリーン色の壁面を作りアクセントにしています。タモ材の木目を活かしたオリジナルデザインのAVキャビネットを壁面に取り付け、「飾る」「収納」機能もプラスしました。壁面上部とキャビネット下部に間接照明を設置し、夜のシーンも演出。

O邸 リビングルーム

〈和室コーナー〉
 リビングの一角に設けられた和室コーナー。
約3畳という小さなスペースだからこそ、リビングに負けない魅力的な場所になるよう意匠的工夫を施しました。正面の壁は藁を練り込んだクリームイエローの珪藻土仕上げとし、壁面下部には格子状に和紙を貼付けたアクセント小窓をつけました。これは暗くなる廊下の明かり窓にもなっています。そして押入れの襖には杉材を薄く帯状にして編み込んだ天然素材のクロスを使用。木や土、紙などの自然素材を使用することで優しい和の温もりを演出しています。
壁面を飾る書は、施主が古くから持っていたものを空間に合わせて額装し直しました。麻布と和紙を用いたパネル仕立てにし、モダンな雰囲気に合わせています。

O邸 和室コーナー

〈ダイニングルーム〉
 ダイニングルームの東側壁面には落ち着いたグレーの織物柄のクロスを使用。
この壁はリビングルームとの間の間仕切りを開けると正面に見えるフォーカルポイント。そこでアクセントウォールとなるよう色をつけました。家族が大好きな南の島を意識して、シックな色合いの中にもトロピカルなモチーフが魅力のファブリックを使って窓を飾り、バリ島の職人さんが手彫りした白石のレリーフタイルを額装して飾りました。

O邸 ダイニングルーム

〈2階廊下〉
 家族の寝室が集まる2階の廊下の一角に家族の思い出を残しました。
この家を新築する前に長年住んでいた家の柱に刻まれていた「柱の傷」。お子さんたちの成長の証であるその傷を新しい家でも残せないかと考え、その高さを記録し、2階廊下の壁面にデザインとして再現しました。白い壁面に細長いタイルを貼り、家族の思い出のアクセントウォールになりました。

O邸 2階廊下

なぜ壁面をアクセントにするのか
 よく「どうすれば素敵な部屋になりますか?」とお客様から相談を受けます。新築でもリフォームでも、多くのお客様は平面図を眺め、頭を悩ませていらっしゃいます。もちろん間取りは重要です。でもそれだけでは素敵な空間は生まれません。
 空間は3次元。つまり高さの情報が不可欠なのです。高さ=壁面のデザインをするかしないかでその部屋の印象は180度変わります。立っていても座っていても、人の視界に入る最も面積の多い場所は壁面なのです。しかし残念ながら日本の住宅の多くが白いビニールクロスに覆われた何も無い壁で、あるのはカレンダーと時計だけ…。これでは「素敵な空間」など夢のまた夢です。
 そこで今回ご紹介した「アクセントウォール」が重要になってくるのです。フォーカルポイントとなる壁面に色や柄、タイルなどの異素材を貼るなどしてデザインをすることで、空間にメリハリが生まれます。そしてそこにデコレーションを施すことで、部屋の印象を変えることが可能になるのです。

自分らしく「飾る」楽しさ
 住まいには住む人の家に対する思いや生活を楽しむ心のゆとりが如実に表れます。毎日、家に帰る度に小さな幸せを感じられるインテリア。それが「素敵な空間」なのです。そのためには住む人が心豊かに暮らせる家になるよう、空間に「場」を作ることが大切です。そんな場をアクセントウォールで作ったら、次はそこを自分らしく飾ってみましょう。
 上手に壁面を飾るコツは幾つかありますが、バランスはその中でも大切なポイント。装飾とは、沢山飾れば良いということではありません。「引き算の美しさ」という言葉があります。少し離れた場所から天井の高さや家具とのバランスを見て美しい余白がモノをより美しく見せることにも注目してみましょう。
 そして最も大切なこと。それは「自分らしさ」を見つけることです。はじめは本や雑誌を参考にしてテクニックを身に付け、次に自分なりの工夫で楽しみましょう。飾るものにルールはありません。お気に入りだった古いカレンダーの写真でも、頂き物の包装紙でも構いません。季節や気分に合わせてデコレーションをしてみましょう。また、自分のお気に入りのモノを集めたコーナーも良いでしょう。自分が「好きなもの」を飾ること。そうすることで「自分スタイル」が生まれ、愛着のある空間になるはずです。


デコレーション実例(H邸)

report & Photo:c//space(eriko hosoi)