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京町家に見る、美しい日本の住まい。

京町家に見る、美しい日本の住まい。




古き伝統が詰まった町家の再生プロジェクト
 間口が狭く奥に長い京町家。通りに面した場所を店舗とし、奥が住まいとなる職住一体型の住居形式で、江戸時代中期には今の形になったと言われています。近年、町家は住民の高齢化や老朽化など様々な問題を抱え、古き良き時代の姿を残したまま維持管理することが厳しくなっていると言われています。そんな中、株式会社庵(いおり)では、古い町家をリニューアルし、現代に合った形で再生するプロジェクトが試みられています。それは、「町家で暮らす」ことを体験出来る、一棟貸し切り型の滞在施設「町家ステイ」というシステムです。



旅をしながら町家暮らしを楽しむ
 一棟貸しのため、町家の大きさ、広さに合わせて2名から最大14名まで滞在出来るこのシステム。スタッフや他の利用客の目を気にすること無く、自由に町家住まいを体験出来ます。そのかわり、朝食や夕食、ルームサービス等のサービスは付いていません。町家には小さなキッチンがあり、食器も完備されているので、町中で購入したおばんざいを頂くことも可能です。また少し贅沢をしたい夜は、仕出しを頼んで、外出すること無く料亭の味を楽しむことも出来ます。

日本の伝統美を活かした改装プラン
 今回取材させて頂いた京町家は、古美術商が並ぶ祇園新門前にあります。職住一体型の住居である町家は、通りに面した場所が土間になっており、以前そこは生花店だったそうです。外観は伝統的な虫籠窓(むしこまど)と縦格子戸が印象的なシンプルな佇まい。中に入ると暖簾と大きな花器に活けられた花が利用客を迎えてくれます。従来の町家では、入口から奥まで土間が続き、そこを「通り庭」と呼んでいたそうです。その通り庭には竃(かまど)があり、炊事場となっていました。この物件の改修では、竃があった場所は板間となり、現在リビングとなっています。上部は高い吹き抜け天井になっていて、以前火を焚いていた場所だと分かる黒い煤(すす)がしっくいの壁に残っています。また、その高い吹き抜けを利用し、光と風を通すための高窓と明かり窓があり、縦に長い町家の中の真ん中に位置する板間でも暗くならず、さわやかな風が抜けるのを感じることが出来ます。 
 奥には床の間を配した6畳間があり、その先には石灯籠のある庭が続きます。板間と和室を仕切る襖は定規縁仕立て。シンプルなしつらえがこの空間に似合っています。自然素材を多用したこのような伝統的な日本家屋は、天然の除湿器であり、加湿器です。盆地にあり寒暖の差が激しい京都では、特にこのような風が通る間取りが合っていたのでしょう。引戸を開けば、広い空間となり、閉めれば個室となる。このような建具を多用した造りは、柔軟性に富んでいて、限られたスペースに建つ住宅プランとして今も参考にしたいところです。  2階に行く動線は2カ所。元々あった階段箪笥は、今も板間のフォーカルポイントになっていますが、勾配が急のため、改修工事で別の階段を設けています。2階に上がると高い天井があり、柱や梁が印象的な広い空間が広がっています。床には畳が敷かれ、くつろぐこともできる場所になっています。両サイドに和室があり、寝室として利用されています。































水回りなど設備を新しくすることで快適な現代生活を
 外観や居室は可能な限り日本の伝統的手法で蘇らせ、水回りは最新の設備を配して改修する。そうすることによって、国内外の利用客が快適に過ごせるよう工夫しています。この町家では奥の庭に面した一番眺めの良い場所に檜風呂とシャワー設備を設けています。その手前にある洗面室には信楽焼の洗面ボウルをしつらえ、最新設備と和のデザインを巧みに融合させています。他にも2カ所パウダールームを設置し、大人数の利用でも快適に過ごせるよう配慮されています。また、火器はありませんが、コンパクトながら充実した機能を持つキッチンが玄関近くにあり、引戸で隠すこともできるよう設計されています。食器も充実しているので、自由にコーヒーや軽食を楽しむことが出来ます。
 京都の冬の寒さは有名です。床暖房設備を整え、快適な室温調整にも配慮しています。そして照明にもこだわりが。光と影を効果的に生み出すよう配灯された照明プランで、利用者にも好評だそうです。























20年後にバトンタッチするために
 この町家再生のプロジェクトは、京都で長きに渡って培われてきた、町家の良さを後世に伝えるためのひとつの手段として注目されています。町家は残したい。けれど様々な問題からそれが難しい。そんなオーナー達の理解と協力を得て、この「町家ステイ」というシステムが成立しています。古い家屋は、耐震補強等、大掛かりな工事を必要としているものが数多くあります。その費用を考えるだけでも、維持管理にかかるオーナー側の負担の大きさが分かります。滞在施設として解放する。この試みは経費の面だけではなく、多くの人に町家の良さを知ってもらうためにも有効です。古い家屋を改修し、多くの人がそこに滞在する。日本の伝統を肌で感じる体験を通して、その良さを改めて認識し、建物が受け継がれていく道筋を作る。それが実践されている現場でした。

Text & photos:細井絵理子(c//space)
取材協力:株式会社 庵
http://www.kyoto-machiya.com/