日本には伝統的な和紙を今も作り続ける地域が数多くあります。
その中でも、襖紙やインテリア素材として多用される和紙として知られる『越前和紙』についてご紹介します。
越前和紙の中心産地は、福井県越前市の今立地区に位置する「五箇(ごか)」と呼ばれる地域とその近郊です。「五箇地区」とは大滝町、岩本町、不老町、新在家町、定友町の五つの集落からなり、岡本川の流域に紙漉き工房や和紙関連施設が集まっています。
今回のコラムでは複数回に分けて『越前和紙』の里の魅力をお届けします。
紙がつくられた「家」を読み解く
この街に来たらぜひ訪れてほしい施設の一つが、この卯立の工芸館である。
見学や体験ができるこの施設は単なる体験施設ではない。
この建物そのものが、この地の歴史や人々の暮らしを伝える国の登録有形文化財(建造物) なのである。
現在、福井県越前市新在家町にあるこの建物は、江戸中期の紙漉き家屋を移築、復元し他もので、手漉き工程を同時に見られる貴重な場所だ。
元々の創建は寛延元年(1748)と伝わる。
1996~97年に定友町から新在家町へ移築、改修。
木造平屋建、瓦葺、建築面積は244㎡ 。元の所有者は、定友町で紙漉きを営んだ西野平右衛門家 。
妻入り卯立という正面性
この建物は江戸中期の家屋である「旧西野家住宅主屋及び紙漉場 」を移築し、復元した施設で、当時の住居と工場が一体となった間取りが特徴である。
また、施設の名前の由来にもなった「卯立(うだつ)」も大きな特徴となる。
棟に対して直角の妻面を入口側に見せる「妻入り」の正面に卯立を立ち上げた形式で、五箇地区に残る紙漉き家屋の典型的な構造・間取りとされる。卯立は隣家との境に設ける防火壁を起源とする要素として知られるが、この建物では正面の造形として家の格と紙漉き家の誇りを強く示す。
住居と工場が一体になった間取り
「住宅主屋及び紙漉場」として、2008年7月8日、国の登録有形文化財(建造物) に登録されている。
紙漉きは水、火、原料処理、漉槽、圧搾、乾燥を必要とし、家の内部と外部を連続して使う。
土間、作業場、居室(和室)などがあり、紙漉きや紙の品質チェックに適した窓の位置や採光、建具、煙や湿気の逃がし方、屋外の干し場の関係など、製紙に適した工夫が随所に見られる。
古文書をもとに復元された道具と実演
紙漉き場には越前和紙関係の古文書を参照して再現した道具が置かれ、伝統工芸士らが手漉きの和紙をつくる工程を見学できる。静態展示ではなく、道具の配置、身体の移動、音、水の動きまで含めて紙漉きの工程を間近で観察できる点が特色である。
夏用の敷物「油団(ゆとん)」
また、1階の居住スペースである和室には越前にて古くから伝わり、現在まで使用される「油団(ゆとん)」がある。これは「和紙のじゅうたん」「紙の涼感マット」とも説明されるもので、越前和紙を幾重にも貼り重ね、荏胡麻油を塗って磨き上げる夏用の敷物である。
その主な製法:
1.楮を原料とする和紙を何層にも貼り重ねる
2.表面の仕上げには越前の鳥の子紙を用いる
3.裏面には防湿・防腐などのため柿渋を塗る
4.表面には荏胡麻油を塗り、繰り返し磨き上げる
この施設同様に、越前の古い家を訪ねると畳の上に艶やかな飴色の敷物が残されていることがある。靴下越しにもツルツルとした感触を感じることができる。裏面に柿渋、表面に荏胡麻油を施して丹念に磨き上げることで、紙とは思えないほど硬く滑らかな面が生まれる。素足に触れるとひんやりと心地よく、使い続けるほど色艶を深めていく。
良質な和紙を大量に使い、製作にも長い時間を要するため、かつては名家や料亭などで使われる高級な生活道具だったという。耐用年数は70~100年ともいわれ、高温多湿な日本の風土に合ったサスティナブルな敷物と言える。
ギャラリーでの企画展示も
2階は現在、ギャラリーとして企画展示が行われ、和紙を使った現代作家のアート展示など、さまざまなイベントが開催されている。
越前和紙の里 卯立の工芸館
(旧西野家住宅主屋及び紙漉場)
〒915-0232 福井県越前市新在家町8−44
本コラムではインテリアの内装材にまつわる様々な情報を発信してまいります。国内の新しい製品情報はもとより、エンドユーザーの消費行動に関する変化や海外トレンドから得られるデザインのヒント、話題の建築などにも着目しご紹介してまいります。