日本には伝統的な和紙を今も作り続ける地域が数多くあります。
その中でも、襖紙やインテリア素材として多用される和紙として知られる『越前和紙』についてご紹介します。
越前和紙の中心産地は、福井県越前市の今立地区に位置する「五箇(ごか)」と呼ばれる地域とその近郊です。「五箇地区」とは大滝町、岩本町、不老町、新在家町、定友町の五つの集落からなり、岡本川の流域に紙漉き工房や和紙関連施設が集まっています。
今回のコラムでは複数回に分けて『越前和紙』の里の魅力をお届けします。
進化し続ける新しい和紙の魅力
1909年創業の長田製紙所は、長年、手漉きの襖紙の老舗として、様々な日本の美をテーマとする柄付けにこだわってきた会社である。そして昨今では、その伝統的技法を生かしながら新しい創作和紙を意欲的に開発、製作している。
近年ではホテルなどの商業施設の内装材として、また大きなアート作品としての納品も見られ、その独創性はインテリア業界関係者からも注目度が高い。
伝統の技術から新たな発展を遂げた新しい襖紙 そしてアートのような和紙へ
例えば「飛龍」。これは二代目の長田榮子氏が昭和初期に考案した見本紙をもとに再興・洗練させた襖紙の柄付けの技法だが、それを息子である4代目の長田和也氏は、襖紙としてだけではなく、タペストリーやテーブルセンター、間仕切りスクリーン、特注アートへと展開。
飛龍:ネリという粘液質の助剤を三椏(ミツマタ)と混ぜ、細い管より空中に飛ばして勢いのある線を紙に乗せてゆく技法。
龍が雲の間を飛び回る様になぞらえてこの名がついた。
昭和初期、二代目当主が企画・製作した見本帖の中にある襖紙の柄である。
時代とともに廃れ忘れ去られようとしていたこの技法を、質にこだわり新しい飛龍として再生。
(長田製紙所ホームページより一部引用)
その他に「雲肌」や「彩雲」などの美しい和紙を製作している。
雲肌:水の流れを一定にして、人の手のあとを究極に排した「鳥の子」という無地の紙に対し、こちらは自由に流れる水の動きをそのまま紙に映し出す技法により、独特の風合いを出している。青い空に流れる高く薄い雲のような優しい風合いで「雲肌」という名前が付いた。
(長田製紙所ホームページより一部引用)
彩雲:日の光で薄く彩られる雲を表現して、彩雲と名付けられている。
雲肌の流れに薄く染めた色の紙料を漉き入れることで、奥行きのある表情を持った紙。漉き入れる色によって、そのイメージはガラリと変わる。
(長田製紙所ホームページより一部引用)
創作和紙と新しい技法
また、「漉きあかり」というシリーズでは、紙の原料となる繊維の密度差と線の重なりに変化をつけ、従来の絵付けではなく、濃度の違いで厚みを変え、立体的に柄を浮き出させる技法を確立。その独特な技は、伝統的な紙漉きの製作風景とは大きく異なる。
まるで現代アートの作家が自由な筆致で絵の具のチューブから直接キャンバスに線を描くように、この漉きあかりのシリーズでは、容器に入った原料を絞り出すようにしてその場で曲線や円で、文様を描き出す。
そこで生まれる柄は1点1点異なり、印刷のように同じ文様は生まれない。まるで水の波紋のような渦模様や花のモチーフは現代のモダンな空間にも華を添える、美しいアートのようだ。
そしてこの創作和紙は、光を透過させることでその魅力を更に増す。紙の成分の密度の違いもあり、透過率が場所によって変化することで美しい光と影が生じるのだ。まさにその名の通り、照明器具のシェードとして使用すれば、木漏れ日のように光と影が天井や壁、床にまで届き、紋様を浮かび上がらせる。
創作意欲はとどまる事を知らない
例えば、雪国で初冬に収穫した野菜を雪の下に埋めて、糖度を上げながら長期保存する方法があるが、同じように手漉き和紙を雪にさらしてみたらどうなるだろう?という発想が出てくるのだ。実際に雪にさらした紙を見せていただいたが、なんとも微妙な柔らかい色に変化しており、非売品だと言っていたが、是非使ってみたいと思わせる魅力に溢れた美しい紙だった。
襖紙の需要が減少する中、大胆な発想とチャレンジ精神によって、新たな魅力を引き出そうとする意欲的な姿がそこにはある。
柿渋を用いた創作和紙
アクセサリーやノートなどの小物も充実
近年では和紙を用いた美しい色合いのピアスやノートなどのアクセ絵サリーや雑貨も展開。4ぢ目にはセンスの良い娘さんがいて、商品企画をされていると伺う。工房内にあるギャラリーには、魅力的なグッズが取り揃う。未来の5代目(?)も新しい時代に向けて、和紙の可能性を広げてくれそうである。
株式会社長田製紙所
〒915-0234 福井県越前市大滝町29-39
本コラムではインテリアの内装材にまつわる様々な情報を発信してまいります。国内の新しい製品情報はもとより、エンドユーザーの消費行動に関する変化や海外トレンドから得られるデザインのヒント、話題の建築などにも着目しご紹介してまいります。