常識に捕われない使い方

柊家/客室の床の間
柊家/客室の床の間

文政元年(1818年)より続く京都の老舗旅館“柊家”。その新館には「伝統と革新」が息づく日本の新しきデザインがあります。様々な伝統素材が自由な発想と確かな技術のもとに新しい和の伝統となって現れ、木や竹、漆といった和の素材が様々な表情を見せてくれるのですが、ここでは和紙の使い方についてご紹介しましょう。

不特定多数の人が利用する場所ではデリケートな素材は避けられがちですが、この柊家では和紙を大胆にそして贅沢に使用した客室がいくつも見られます。そう、紙というと破れやすく汚れやすい素材というイメージを持つ方も多いでしょう。しかし、和紙は美しくはかなげな印象がありながらも実は強い素材でもあるのです。その和紙の特性を活かし、曲面に貼ったり、光を透かすなど様々な技法を用いて美しい空間を生み出しています。


取材協力:柊家

有限会社エイト・エフェクト一級建築士事務所 代表 道田 淳氏

井上光薫堂 井上利彦氏

光と和紙が織りなす遊び心

床の間の壁に浮かび上がる黄金色の柊の葉。まるではらはらと舞い散る葉のように幻想的に浮かび上がる光の演出に驚きます。この床の間の壁は、全面ガラス張りの壁面にベニヤ板で作ったフラッシュパネルを嵌め込み、そこに和紙を重ね貼りしてわざと光が入らないようにしてあります。石垣張りという伝統技法を使って貼られた和紙の下には柊の葉の形にくり抜かれた部分があり、そこから光が漏れる仕組みになっているのです。日が暮れてからチェックインしたお客様には何の模様もない和紙の壁面に見えるのですが、朝目覚めてみると、そこには柊の葉が浮かび上がるという大変凝った趣向となっています。

柊家/客室の床の間 全景
柊家/客室の床の間 全景
柊家/客室の床の間
柊家/客室の床の間

和紙に包まれた客室

天井から壁面まで全てを和紙に包まれた客室。不思議な曲線が空間を覆い、そこには和紙が張り巡らされています。和紙が持つ“張り”と“柔らかさ”が共存するその空間は、窓から差し込む光や照明によって柔らかな陰翳を生み出します。

柊家/客室
柊家/客室
柊家/客室 天井
柊家/客室 天井
柊家/客室 天井
柊家/客室 天井
柊家/客室 襖
柊家/客室 襖