襖(ふすま)は和室にだけあるもの」と皆さんそう思っていませんか?
平安時代から日本の住まいで大きな役割を果たしてきた「襖」。
あまりにも身近で、現代の洋室中心の住まいでは忘れられがちだった「襖」。
今回お話を伺った村岡由紀子さんは、インテリア業界でも数少ない「襖のデザイン」の専門家です。
実は機能的で、狭い日本の住宅事情ではとても便利な間仕切りでもある、襖の新しい魅力と活用法について教えて頂きました。
襖コーディネーター
村岡由紀子さん
プロフィール
建材和紙メーカーに約10年勤務。住宅・モデルルーム・店舗・茶室・修復工事等の
襖、和紙張り、和金物のコーディネートに携わる。
2007年から、襖コーディネーターとしてスタート。
提案から材料の手配、施工まで細やかな仕事を目指す。
機能性と装飾性を併せ持つ「襖」の魅力
狭いと言われる日本の住宅で、引戸は大変合理的で小スペース化を図れる機能性の高い間仕切りです。なかでも襖は日本の気候にあった和紙という優れた素材を使うことで機能性はもちろんのこと、和紙が持つ豊かな色柄によって装飾性もあります。
昔ながらの固定概念に捕われず、自由な発想を加えることで、現代の住宅にマッチする素敵な襖が部屋を豊かに彩ってくれるのです。
シンプルモダンから豊かな装飾性の時代へ
ここ10数年、日本の住宅デザインは「シンプル」「モダン」というキーワードのもとに洋室中心の空間が多く生み出されてきました。それに合わせ、襖も壁の一部として溶け込む面として捉えられ、装飾性を排除した「目立たない襖」が多くなっていきました。
しかし、襖のデザインは、本来、大変バリエーション豊かなものです。襖には襖紙、椽、引手があり、それぞれに素材や色、柄、形は多様でその組合せは数限りなくあります。空間に彩りを与えてくれるカーテンのように、襖をデザインすることで空間を豊かに演出できるのです。
ここ最近の日本の住宅デザインの傾向として「オリジナリティ」や「装飾性」が言われていますが、まさにその空間を飾るにふさわしい「豊かな装飾性のある襖」が、素敵な住まいづくりに大きく貢献してくれるのです。
快適な空間を生み出す和紙の力
和紙は呼吸します。調湿作用のある自然素材なのです。そのなかでも手漉きの和紙は年月による劣化が少なく、パルプの紙に比べると格段に丈夫で長持ちします。
紙は弱いと言う固定観念は、和紙を実際に使うと間違っていたと気づいてもらえることでしょう。また、化学糊を使わない施工は、アレルギー問題等の住まいの環境を考える上でも大切なことです。
最近では撥水加工がしてあるものなど、防汚性が高く、水滴をはじき、汚れても水拭きができる和紙もあります。用途に合わせて目的にあった紙を選ぶことが可能です。
オーダーで“オリジナリティーの高い”デザインを
襖用の素材は驚くほど種類があります。それらをどのように組み合せるか、デザインするかで住まいにあった一点物の襖を作ることが出来ます。
襖紙のなかには、色や柄の組み合せを選んで作るオーダーメイドの商品もあります。また畳と一緒で襖のサイズ(大きさ)も自由にデザインすることが可能です。丈長や幅広の襖で一枚の襖紙で貼れない場合は、和紙を貼り継ぐ「継ぎ貼り」という方法を用います。継ぎ目が意匠的にも美しく、どのような建具寸法にも対応でき、襖の可能性を広げます。また着物や帯(薄地のもの)を裏打ちして襖の裾に貼れば、目を見張るような美しいオリジナリティのある襖が出来上がるのです。
洋室と響き合うデザインの襖
和室がなくても、洋室に合う建具として襖を製作することも可能です。
例えばシンプルな洋間の間仕切として、太鼓貼りの椽なしのモダンな引戸はいかがでしょう?
優しく光を透過させる和紙を使えば障子やランプのシェードのような効果を楽しむことができます。
または、空間のフォーカルポイントになるように色や柄の大胆な和紙を使って、パーテーションのように襖を配するのも効果的な使い方です。
洋室と和室が隣り合う間取りの場合、洋室との調和を考えて互いに響き合うような襖をデザインすることが成功の秘訣です。
季節や住まい方の変化に合わせて模様替え
季節によって入替えができるのも襖の魅力です。暑い時期には葦戸をいれたり、涼やかな色柄の襖に替えたりと、インテリアの模様替えとして楽しむことが容易です。
また、何度でも貼替えができ、メンテナンスがしやすいのも襖の魅力です。
襖コーディネーターの仕事とは
お客様の住まいに合った美しい襖をデザインし、素材の手配から製作、施工までをトータルにコーディネーション致します。お気軽にご相談下さい。
近年、生活のなかで忘れられてきた襖の良さ、美しさを多くの方々に知っていただき、使ってもらうことが襖コーディネーターの仕事です。襖づくりに携わる専門家、職人さんの技術の結晶である襖をコーディネートすることで、その素晴らしさを広く紹介し、これからの時代もその技術を残していく助けができればと考えています。
本コラムではインテリアの内装材にまつわる様々な情報を発信してまいります。国内の新しい製品情報はもとより、エンドユーザーの消費行動に関する変化や海外トレンドから得られるデザインのヒント、話題の建築などにも着目しご紹介してまいります。