サイトリニューアルを記念する第一回目となる今回は、最新トレンド情報Part1として2020年1月の開催で50周年を迎えたインテリア・ファブリックスとウォールペーパーの展示会“heimtextile(ハイムテキスタイル)”の情報をお伝えいたします。
2019年はファッション業界でもようやくサスティナビリティについての動きが本格化した年となりましたが、インテリア業界でもその動きが表面的なデザイントレンドとしてではなく、ライフスタイル価値観に関わる部分にまで踏み込んだ形で発信されるようになってきました。大量生産、大量消費をして成り立っている小売業界に訪れた大きな価値観の変化に、今後どう生産者やデザイナーが向き合っていくことができるのか。ヨーロッパの動きの一端をご紹介いたします。

サスティナビリティと社会背景の変化に焦点

展示会:heimtextile 2020/ハイムテキスタイル 2020
会期:2020年1月7 日~10日
会場:ドイツ・フランクフルト国際見本市会場
トレンドブース テーマ「WHERE I BELONG」

今年で50周年を迎えたハイムテキスタイル展は毎年1月初旬にドイツのフランクフルトで開催されています。記念イヤーとなった今回ですが、ヨーロッパ全体に吹き荒れる不景気の影響からか出展者数や商品のパワーという点において大きな飛躍は見られず、少し寂しい印象も。しかしそこは世界最大規模のインテリアファブリックスと壁紙の展示会。これまでの力の蓄積を感じさせる発信力あるトレンドブースを展開。そしてTOP AGENDAとしてサスティナビリティを取り上げ、「ローカルの素材」や「環境に優しい素材」の使用や「ストックやレンタルの活用」「リサイクル」などをキーワードにMATERIAL MANIFESTを打ち出しました。また、今回は内装材メーカーやバイヤー、インテリア・デザイナーだけに向けた構成だけではなく、建築士などの建築設計関係者にもっと内装材の機能や素材の可能性、商品の魅力を知ってもらおうとする企画が打ち出され、大きな注目を集めました。これまで接点の少なかった設計士などのプロユーザーに内装材から新しい未来の建築デザインの可能性を探ってもらおうというこの企画は、今後も継続して他の国でも試みられることでしょう。

ハイムテキスタイル 会場
ハイムテキスタイル 会場
建築士に向けたマテリアル紹介
建築士に向けたマテリアル紹介
多様な素材を紹介
多様な素材を紹介
建築士に向けたマテリアル紹介のコーナー
建築士に向けたマテリアル紹介のコーナー
建築士に向けたマテリアル紹介のコーナー
建築士に向けたマテリアル紹介のコーナー
建築士に向けたマテリアル紹介のコーナー
建築士に向けたマテリアル紹介のコーナー

WHERE I BELONG

heimtexitil trends 20/21のタイトルは『WHERE I BELONG』。 今回はオランダからAnne Marie Commamdeurをディレクターとして招聘し、彼女の未来を見据える目と分析力が大いに発揮されました。

テーマは「Multilayered, individual and emotional.(多層的、個人的、感情的)」

このテーマの根底にある重要キーワードは「アイデンティティ」です。従来の国籍や人種によるアイデンティティではなく、Multilayered Identities、すなわち多層的なアイデンティティを持つ世代について注目し掘り下げられています。次にIndividual、つまりは個を形成するのは国よりも育った地域や環境が重要であり、学びや働き方がその人のそれぞれの立ち位置になるという考え方です。また、emotional、何を面白いと感じるか、どこに気持ちが向かっていくかなどエモーショナルな要素も重要だと説いています。

デジタルネイティブな世代が大人になり、この国際化の時代の中で既存のルールに縛られない、多層的な価値観を持つ人たちが増えていく中、彼らが何に注目し、インテリアにどう影響していくのか。

2020年代を迎え、消費者心理の変化とマーケットの変化、そしてSDGsやサスティナビリティなどに代表される“Green Life”(注1)的な価値観が再び注目される今だからこそ、このテーマは非常に重要であると言えるでしょう。

このトレンドブースではこのことを前提に5つのテーマブースと急遽追加されたサスティナビリティな新素材に関するブースが加わり構成、発信されました。

今年のトレンドタイトル「WHERE I BELONG」
今年のトレンドタイトル「WHERE I BELONG」
今年のテーマカラー
今年のテーマカラー
ブースレイアウト
ブースレイアウト

ACTIVE URBAN

都市生活者に向けたスポーティで生活の質を向上させる機能性に優れた素材を紹介。ボンディング素材やラテックス、リサイクル繊維を使用したものやコーティング素材など。軽くて丈夫で様々な使い方が可能なマテリアルが色別にカテゴライズされ展示されています。注目は3D素材や吸音素材。特に音に関わる素材の開発は各国のトップエディターで競争が進んでいます。

都市生活者の日常は、とても速いスピードで変化し、人工的な環境下の中で様々な問題に直面しています。ゆえに実用的で適応性の高い解決策を常に求めているのです。彼らは、技術的パフォーマンスが高く機能性のある素材、利用可能で再生可能な素材を賢く利用したいと欲求しています。そしてそれらは見栄えが良くおしゃれであることも重要です。

ACTIVE URBANのイメージコラージュ
ACTIVE URBANのイメージコラージュ
ACTIVE URBANのキーカラー
ACTIVE URBANのキーカラー
様々なテクニカル素材を色別にディスプレイ
様々なテクニカル素材を色別にディスプレイ
化合線から天然素材まで多種多様
化合線から天然素材まで多種多様
プリントから型押しまで様々なテクニックが用いられている
プリントから型押しまで様々なテクニックが用いられている
反発力や質感もそれぞれ
反発力や質感もそれぞれ

PURE SPIRITUAL

PURE SPIRITUALのイメージカット
PURE SPIRITUALのイメージカット
PURE SPIRITUALのキーカラー
PURE SPIRITUALのキーカラー

自然界の神秘性と人工的テクニックを重ね合わせ、ピュアでバランスのとれたマテリアルを展示。シンプルで自然な暮らしを求める現代の理想主義者は、完全性と純粋さを求め、超自然界とつながることでバランスを回復しようとしています。彼らは個人的な避難場所を求めて、現実主義と神秘主義を切り替えながら、テクノロジーがもたらす利便性も享受します。自然との新たなつながりを求めて原材料に有機物質やピュアな繊維が選択され、自然の痕跡や有機構造、不規則性をデザインの中に見出し表現しています。これからの時代のナチュラル志向は、オーガニックも大切だけれど、その表現や加工においてテクノロジーの進化も重要だと考えていることを示しています。中央には砂を用いたアートが象徴的に展示され、自然が生み出す循環性を表現。小さな鉄球が盤面を有機的に動き、美しい砂紋を創り出しています。

PURE SPIRITUALの会場
PURE SPIRITUALの会場
素材の展示
素材の展示
素材の展示
素材の展示
素材の展示
素材の展示
素材の展示
素材の展示
砂を使ったアート
砂を使ったアート