襖用語集

あ行

あかりしょうじ【明り障子】古くは襖も衝立も一括して障子(そうじ)と呼んでいた。絹や紙を貼ったものはよく外光をとり込むため、これを明り障子と呼び、襖障子と区別した。今日では障子といえばこの明り障子のことをさす。中世以降腰に板を用いるようにもなった。→ふすましょうじ【襖障子】

あさおりもの【麻織物】麻の糸で織ったもの。麻は苧麻、大麻、亜麻などの繊維。

あずましょうじ【東障子】紙の代わりにガラス、もしくは和紙を貼ったガラスを入れた障子。

あらましょうじ【荒間障子】組子を荒く組んだ障子。

あるみぶちぶすま【アルミ縁襖】アルミの縁を使った襖。

あわせじょうき【合わせ定規(定木)】じょうぎぶち【定規(定木)縁】

いせがた【伊勢型】→しぶがた【渋型】

いたぶすま【板襖】=べにやぶすま【べニヤ襖】簡単に組んだ組子の上に下貼りの代わりに厚めの合板(べニヤ)を貼った襖。最近は片面に襖紙、片面に壁紙などを貼った「戸襖」もある

いっぽんびき【一本引き】=かたびき【片引き】戸、襖の開閉方法には引きと開きがある。引きは敷居と鴨居の溝の中を左右に滑らせる方法。溝が1本の場合を一本引きという。

いれは【入端】骨の上下の框と竪框の接合方法の一種。打子が框に食い込むように入っている状態。

いれは【入端】

いんろう【印籠】=いんろうふち【印籠縁】襖の縁の内面に骨が入るように削りとってある縁のことで、柄(ほぞ)の違いなどにより、本印籠、皿印籠、片印籠の3種がある。建築でいう印籠とは異なる。

うけばり【浮け貼り】→ふくろばり【袋貼り】

うちぐも【打雲】漉き模様の技法のひとつで、最も古典的かつ伝統的なもの。

うちこ【打子・内子】襖を構成する部材。骨を囲む縁の横桓のこと。上下に2本ある。

うちつけ【打ち付け】→ぶっつけ【打付】

うちつけばり【打ち付け貼り】光線による襖の透けなどを防ぐために行う下貼りの工程。

うちのりすんぽう【内法寸法】=うちのり【内法】外枠を除いた内部寸法。建具に関しては溝の深さに関係なく敷居と鴨居との間の寸法(高さ)と柱と柱の間の寸法(幅)。

うらうち【裏打ち】裏に腰の強い紙や布を貼りつけて表面に用いられた薄い紙、布などを補強すること。

うらがみ【裏紙】押入襖などの裏側(押入側)に貼る紙。おもに雲華紙などが用いられる。

うらばり【裏貼り】押入襖などの裏面に紙を貼ること、また、貼るものをいう。主に雲華紙を用いる。

うるし【漆】古代から用いられた天然塗料。漆の樹皮から出る分泌液を原料とする。乾けば堅固な光沢をもつ。

うるみ【潤み】漆の色の一つ。潤むとは曇る、黒味を帯びるの意。褐色、飴色の塗りを意味し、黒漆に朱や弁柄を混ぜてできる。混入の割合で幅広い茶系の色ができる。襖の縁に多く用いられる色がこの潤みである。「妹」の字を当てることもある。

うわがみ【上紙】→うわばり【上貼り】

うわぬり【上塗り】漆などの最終段階の塗り。乾燥させれば仕上がりとなる。漆などは最終仕上げとして木炭で研いでさらに磨くこともある。

うわばり【上貼り】襖、壁、天井などに最後に表面に貼るもの、及び貼ること。貼る材料はいろいろあるが、襖の場合は絹、麻、綿などの布貼り、鳥の子をはじめとする紙貼りがほとんどである。下貼り・中貼りのあと仕上げとして美しく、皺のよらぬよう四辺を濃い糊で貼り、乾燥してピンとなるよう素材に応じて特殊な技術を駆使する。→したばり【下貼り】

うんかし【雲華紙】漉き染めの鳥の子紙に白い繊維が漉き掛けられた紙で、現在は襖の裏貼りによく用いられる。語源は、漉き上がりが空に浮かんでいる雲に見えることに由来する。→うらばり【裏貼り】

うんもふんこんにゅうし【雲母粉混入紙】漉き模様の技法のひとつで、雲母の粉末を漉き込んだ紙。

うんりゅうし【雲竜紙】漉き模様の技法のひとつで、紙面全体に雲の模様をつくった紙。漉き模様の中でもっとも種類が豊富。障子紙に用いられるものもある。

えどま【江戸間】→かんとうま【関東間】←1きょうま【京間】ほんま【本間】

えんしゅうごのみ【遠州好み】江戸時代前期の茶人、小堀遠州の好んだというもの。遠州は家光の茶道師範を務め、絵画・和歌・建築・造園・陶磁に造詣が深かった。

おきあげ【置き上げ】襖紙に模様を施す技法のひとつ。渋型を用いて、雲母や胡粉を竹べらで摺りこむこと。

おとしひきて【落とし引手】→きりひきて【切引手】

おびばり【帯貼り】→はりおび【貼帯】

おびもよう【帯模様】襖につける帯状の模様。位置は引手中心のもの(引手帯)と、下の縁から25~30センチほどあげて30センチぐらいの幅で模様をつけたもの(腰帯)とがある。

おびもよう【帯模様】

おふせっといんさつ【オフセット印刷】一般的な印刷方法で、代表的な平版印刷。

おれあい【折れ合い】竪縁を骨につけるとき、釘が縁の表面に見えないようにするための特殊な釘のこと。折れ合い釘ともいう。折れたように曲がっているのでこの名がある。堀付きの縁に用いる。

か行

かきえ【書絵】襖では肉筆画を指す。特注で製作するもので、さまざまな絵模様が描かれる。

かしゅう【カシュー】カシュー塗料の略。ウルシ科の植物カシューの実に含まれる液を原料にして作った塗料で漆の代用として用いられる。漆に似た性能をもち、水や油、薬品などにも強く、光沢がある。また、この塗料を作っている会社の商品名でもある。

かたじょうぎ【片定規・片定木】→じょうぎぶち【定規縁・定木縁】

かたつけ【型付け】=がらつけ【柄付け】襖紙の模様を木版や渋型を用いて、パターンのくりかえしで全面に摺ること。木版の場合には型押しともいう。

かたびき【片引き】→いっぽんびき【一本引き】

かまち【框】建具の部材の名称。外周にめぐらす部材で竪框と、横框がある。竪框だけを単に框、横框を桟とよぶこともある。

かみざん【上桟】襖の外周の4本の縁の上の横縁。⇔しもざん【下桟】

かもい【鴨居】建具をはさんでいる上部の横木を鴨居という(下部の横木は敷居)。戸や襖を建て込むための溝がある。

かもいうえ【鴨居上】鴨居と天井の間の物入れの小襖をいう。現在では天袋ともいう。

からかみ【唐紙】字義からは平安時代に唐から輸入された高級紙。転じてそれを使った襖障子。鳥の子に模様を刷り出した唐紙を貼ったものを唐紙障子と言った。絹貼りの障子に対して図柄が豊富で愛用され、後世では唐紙障子を単に唐紙とだけ言うようになる。無地のものを襖、図柄のあるものを唐紙障子と区別した時代もあるが、今日では襖と同義語で用いられている。

がらつけ【柄付け】→かたつけ【型付け】

かわりおり【変わり織】襖の上貼りに用いる織物で横糸(緯糸)に変化をつけたもの。

かんぜすい【観世水】渦を巻いた水の模様。観世流家元の定式模様。

かんとうま【関東間】=えどま【江戸間】柱と柱の距離が1間(182センチ)の場合、内法寸法の1間と柱の芯から芯までの「間とでは違いが出る。前者は関西の計りかたで京間、後者は関東の計りかたで関東間という。関東間のほうが狭く、柱の太さによって襖の大きさも一定しない。三河の計りかたが徳川とともに江戸にもたらされた結果という。⇔きょうま【京間】・ほんま【本間】

かんのんびらき【観音開き】4枚開き、もしくは6枚開きなどの折り戸。現在では2枚開きのものもいうことがある。

がんぴし【雁皮紙】沈丁花科の植物・雁皮の繊維を原料として漉いた紙。緻密な滑らかさをもち、薄く上品で光沢がある。虫害に強く、防湿性にも優れている。本来は鳥の子といえば雁皮紙をさす。今では、生漉きのものとしては本鳥の子特号紙がある。

きかいずき【機械漉き】「手漉き」に対して機械で漉いた和紙をいう。丸網抄紙機や短網抄紙機で漉き、原料は主として、木材パルプ、故紙、マニラ麻など。特殊なものとして、靱皮繊維(雁皮や三椏など)を用いたものもある。和紙としては、襖紙、障子紙、ちり紙、書道用紙などがつくられる。⇔てすき【手漉き】

きかくぶすま【規格襖】=できぶすま【出来襖】襖の高さ、幅等が標準化(規格化)されたサイズの襖。

きじぶち【木地縁・生地縁】素材としての木の持ち味を生かして、木目の見える木肌の縁。檜、杉、ひば、欅、スプルースなどを用いる。⇔ぬりぶち【塗り縁】

きずき【生漉き】生(き)は純一・純粋の意。単一の原料(楮だけ、三椏だけ、雁皮だけ)で紙を漉くこと。それぞれが最上の原料であるから混ぜものをして漉く紙に対して生漉きは純粋・高級紙を意味する。それだけに機械漉きではなく手漉きであることが多い。

きぬしけ 絹織物の襖紙のひとつ。

きのじ【キの字】襖骨の組み方の一種。竪組子の1本、横組子の2本に力骨をいれたもの。力骨がカタカナの「キ」の字の形になるところからこう呼ばれる。

きゅうし【九四】→きゅうしゃくよまいだち【9尺4枚立】

きゅうしゃくよまいだち【9尺4枚立】内法幅9尺の間に4枚の襖が入るもの。九四とも呼ばれる。

きょうからかみ【京からかみ】伝統的な襖紙のひとつ。版木を用いて雲母などで和紙に摺ったもの。京都ならではの模様がある。→きらおし【雲母押し】

きょうじ【経師】本来は仏教の経巻を仕上げる工人のこと。紙や布によるこの工芸技術は経本、折本にとどまらず、掛軸、屏風の表装などには欠かせぬもの。中世より後は障子や襖、額、天井貼り、壁貼り、家屋の内装まで広く扱うようになった。現在では経師屋、表具屋とも呼ばれている。

きょうま【京間】=ほんま【本間】柱から柱までの距離の計りかたには伝統的に二通りあり、柱から柱の内法寸法を計るのが関西方式。これを京間という。また、柱の芯から芯までを計るのが関東方式。これを江戸間という。京間のほうが襖が大きくなり、サイズが一定になる。柱間寸法6.5尺を1間とするものを本京間、6.3尺を1間とするものを中京間という。⇔えどま【江戸間】かんとうま【関東間】

きよばり【清貼り】襖の下貼りの工程のひとつ。上貼りの紙の材質によって行うもので、紙の全面に薄い糊をつけ、襖全体に貼ること。

きら【雲母】キララともいい、銀灰色の雲母の粉末。金箔・銀箔のメタリックなものにくらべ、やわらかくしっとりとした独特の光沢があり、古くから日本画の顔料の一つとして使われている。どの顔料ともよく混ざり、ひそやかないぶし銀のような上品さがあり昔から襖の顔料として多く用いられている。→きらおし【雲母押し】おきあげ【置き上げ】

きらおし【雲母押し】伝統的な唐紙に模様を施す技法。版木を用いて雲母で模様を押すこと。→きら【雲母】

きらびき【雲母引き】泥引きの一種で、雲母を紙に刷毛引きすること。

きらもみ【雲母揉み】雲母引きした紙を揉み、揉皺の雲母を剥落させ変化をつける技法。

きりはめ【切り嵌め】→たてあわせ【建て合わせ】

きりばり【切り貼り】→つくろいばり【繕い貼り】

きりひきて【切引手】襖の引手の一種。引手金具等を用いず上貼り紙を凹型に落として貼り、この凹部に手をかけて引く。そのために下の骨の一小間分を凹面として使う。手の触れるところだけに汚れは避けられないが、さりげないこしらえの良さがある。茶室に使用される太鼓襖によく用いられる。「落とし引手」「塵落とし」ともいう。→ちりおとし【塵落とし】

きんからかみ【金唐紙】模様が彫刻された木製のロ一ルを用い立体的に模様を写した壁紙。本来は金唐皮を紙で模したもので、明治時代に壁紙として輸出された。

きんぎんすなございく【金銀砂子細工】伝統的な金・銀箔の加飾技法のひとつ。金銀の箔を上質の竹筒に紗を貼ったものにいれ、蒔き散らしながら模様を創り上げる。蒔絵が金粉を用いるのと違い、砂子細工は金箔を用いる。

きんぎんふんこんにゅうし【金銀粉混入紙】漉き模様の技法のひとつで、金銀色の粉末を漉き込んだ紙。

きんすなご【金砂子】→きんぎんすなございく【金銀砂子細工】

ぎんすなご【銀砂子】→きんぎんすなございく【金銀砂子細工】

きんでい【金泥】本金箔からつくる金色の絵の具。金箔を根気よく膠(にかわ)液の中に擦り込んでつくる。日本画の彩色や泥引きに用いる。

ぎんでい【銀泥】本銀箔からつくる銀色の絵の具。銀箔を根気よく膠(にかわ)液の中に擦り込んでつくる。日本画の彩色や泥引きに用いる。

くいさき【喰い裂き】下貼り紙を水で線を引いて繊維をゆるめ、刃物を用いないで、手で引き裂くこと。袋貼りなど、紙端の厚みが表面に出てこないようにするために用いる。

くぎかくし【釘かくし】縁の表面に釘の打ったあとが見えないように折れ合い釘などを用いて縁を取り付けること。→おれあい【折れ合い】

くずふ【葛布】葛の繊維を用いた織物。強靱で耐水性に富む。その丈夫さと野趣に富む風合いから襖紙などに使われている。

くで【組手】襖の骨において中子を格子状に組むための溝。

くみこ【組子】襖の骨の縦横の格子組みのこと。縦3本、横11本が一般的に使われる。

くみこぶすま【組子襖】=わぶすま【和襖】伝統的な構造でつくられた襖の呼称。骨襖とも呼ばれる。格子状に組まれた下地骨に下貼りをして仕上げた襖のことで、一般に襖といえばこれを指す。

くみこぼね【組子骨】和襖に使う骨。

くもがた【雲形】襖紙の模様で、雲のたなびいた形。またはそれを表した模様。

くろかわ【黒皮】楮、雁皮、三椏などの表面の皮。塵入り紙などに漉きこむ。→ちりいりし【塵入り紙】

くわちり【桑チリ】下貼り用の和紙の一種。桑の皮などを漉き込んだもの。茶チリ紙より丈夫。現在では、桑の代わりに楮の外皮(黒皮)を用いる。

げんじしょうじ【源氏障子】=なかぬきしょうじ【中抜き障子】源氏襖の中に入れる障子のこと。地域によっては「長崎障子」、「だるま」とも呼ばれる。

げんじぶすま【源氏襖】部分的に障子窓を配置した襖。これにより彩光が可能になる。障子窓の形によってデザイン的な変化を楽しめる。中抜き襖とか御殿襖とかの呼び名があるが、御殿のような大邸宅では外部に接することのない暗い部屋の採光をこの中抜きによって少しでも良くしようとした工夫がうかがえる。地域によっては「長崎襖」とも呼ばれる。

げんじわく【源氏枠】源氏障子を入れる外側の枠(縁)。地域によっては「玉縁」とも呼ばれる。

けんどん【倹鈍】建具などの建て込み方の一つで、上部の鴨居の溝にいったん差し込み、下部の敷居の溝に嵌め落とすもの。「落とし込み」ともいう。

こうかい【叩解】繊維を叩きほぐすこと。

こうぞし【楮紙】楮を原料として漉いた和紙。和紙の中で最も強靱で、その風合いは独特で男性的な表現ができる。

ごしち【五七】襖の高さ寸法が5尺7寸のもの。

こしつきしょうじ【腰付障子】下部が板貼りの障子。腰の高さが8寸なら八寸腰、1尺2寸なら尺二腰、2尺以上は腰高障子。

こしばり【腰貼り】壁の下部に別の紙を貼ること。本来は壁の上塗りの保護のためだが、装飾的な効果もある。白い美濃紙の柔らかい裏面を表にして貼るか、湊紙、鳥の子、奉書紙などが使われる。襖の場合も同様に下部に別の紙、布を貼ることをいう。

こしもよう【腰模様】=すそもよう【裾模様】襖の模様が下部にだけあるものを腰模様という。

ごてんひきて【御殿引手】座金などに豪華な装飾を施した引手。書院造りの建物(御殿)によく使われ、現在では神社、仏閣などに用いられる。

ごはち【五八】襖の高さ寸法が5尺8寸のもの。

ごふん【胡粉】日本画に用いる白色の顔料。

さ行

さらさ【更紗】襖紙に模様を施す技法のひとつ。渋型を用いて、絵の具をボタン刷毛で摺り込む。

さるとり【さるとり】下貼りの厚さを調整するために框を楔形に削ること。

さんげん【三間】→さんげんよまいだち【3間4枚立】

さんげんよまいだち【3間4枚立】3間の間に4枚の建具が入るもの。「三間」ともいう。

さんしちみぞ【三七溝】鴨居や敷居につける溝および溝と溝の間の凸部(これを樋端とか「しま」という)の幅のことで、溝が7分、しまが3分のものをいう。

さんぶこ【三分子】見付きが3分の組子のこと、また、この組子で組まれた骨のこと。和襖骨の中では、もっとも低価格なもの。

さんぼう【三方】縁の花塗りの一種で、骨にとりつける面を除いた三面しか塗らないこと。上三方、甲三方などがある。

さんろくみぞ【三六溝】鴨居や敷居につける溝および溝と溝の間の凸部(これを樋端とか「しま」という)の幅のことで、溝が6分、しまが3分のものをいう。主に天袋に用いる。

しあがりすんぽう【仕上がり寸法】=できあがりすんぽう【出来上がり寸法】襖の縁の端から端までの寸法。→ほねすんぽう【骨寸法】

しきい【敷居】建具をはさんで溝のある下部の横木。

ししちみぞ【四七溝】鴨居や敷居につける溝および溝と溝の間の凸部(これを樋端とか「しま」という)の幅のことで、溝が7分、しまが4分のものをいう。四七溝の場合は、マス縁には太マスを使う。

したじすんぽう【下地寸法】→ほねすんぽう【骨寸法】

したばり【下貼り】襖や壁の下ごしらえとして貼る紙、および貼ること。細川紙、石州半紙、代用石州、茶チリなどを用いる。骨を補強し、最終的な上貼りの仕上げを美しくするために不可欠なもの。⇔うわばり【上貼り】

しっし【湿紙】漉き上げたばかりの濡れた状態の紙。

しとみど【蔀戸】寝殿造りの邸宅の日光を防ぐ上げ戸。

しぶがた【渋型】型染めに使う型紙。渋紙に模様を写し、彫って型紙をつくる。襖紙では、置き上げ、更紗などに用いる。渋紙ともいう。

しぶがみ【渋紙】手漉きの和紙に柿渋を塗ったもの。耐水性と強度が増す。→しぶがた【渋型】

じぶくろ【地袋】部屋の下部に取り付けられる戸棚の襖。床の間の違い棚の下、仏壇の下などに主に用いられる。地袋の上貼りは部屋の襖と合わせ、デザインの統一をはかることもある。⇔てんぶくろ【天袋】

しぶこ【四分子】見付きが4分の組子のこと。また、この組子で組まれた骨のこと。

しもざん【下桟】襖の外周の4本のうちの下の縁。⇔かみざん【上桟】

しゃおり【紗織】縦糸(経糸)が綿糸、横糸(緯糸)がマニラ糸で織ったもの。新紗織と区別するために本紗織ということもある。

しゅんけいぬり【春慶塗り】14世紀、漆工春慶が発明した塗り方で、素地の木質をいかすように色付けをして、その上に透漆を塗る方法で花塗りの一種。

しょいんづくり【書院造り】桃山時代に完成し今日の和風住宅の原形となった住宅様式。別々の建物を渡り廊下でつなぐ寝殿造りと違って、一つの建物の中を仕切って複数の部屋を合わせる様式。主室である上座の間には床の間、違い棚、書院がつく。間仕切りに引き違い戸、襖、障子などか使われる。平安貴族の邸宅であった寝殿造りに対して、武家住宅を代表する。

じょうぎぶち【定規縁・定木縁】襖4枚が引き違いに建て込まれた中央は、縁と縁とが突きつけになる。この部分の隙間を見せないために竪縁に出っ張りのついたものを用いる。これを定規縁といい、両面につける「両定規(合わせ定規)」と主室の側だけにつける「片定規」とがある。片定規は2枚開きにも使われる。

しょうじがみ【障子紙】障子に貼る紙。外光を適度に和らげ、部屋の内外を隔てながらも外の気配を映し、通気性、保温性を保つ。さらに貼り替えがきくという和室特有の機能美を演出するものとして重要。美濃紙や半紙を使う。採光に良く腰の強さをかわれて最近ではプラスチック障子紙などが出回っている。

じょうしん【上新】→じょうしんとりのこ【上新鳥の子】

じようしんとりのこ【上新鳥の子】=じようしん【上新】鳥の子の普及品で、紙はすべて機械漉きのため比較的低価格で均質な特徴をもつ。

じょうはな【上花】襖の縁の花塗りの上等のものをいう。塗立漆ともいう。厚く上品な仕上がり。普通の仕上がりは中花という。→はなぬり【花塗り】

しょうへきが【障壁画】建物の内部の壁画や障屏画のこと。平安時代以釆、壁面や襖、屏風などが日本画の画面形式として用いられ、特に桃山時代から江戸時代にかけて、装飾性に富む豪華な作品がつくられた。

しらた【白太】杉などの丸太の切り口を見ると、中心部が赤く周囲が白い。この赤い部分を建材にしたものを赤味(心材)、白い部分を建材にしたものを白太(返材)という。板材としての白太は赤味と比べると水分を多く含み、耐久性に乏しい。

しるけっと【シルケット】横糸に麻、縦糸に木綿を使った織物。

しんしゃおり【新紗織】本紗織の風合いをスフ糸で織ったもの。織物の襖紙の中ではもっとも廉価。→しゃおり【紗織】

しんとりのこ【新鳥の子】=ちゃうら【茶裏】襖紙の中で最も廉価な和紙。製紙から模様付けまで一貫して機械生産される。新鳥ともいう。

じんぴせんい【靱皮繊維】植物の茎などの周辺部(外皮の内側)にある繊維。強靱で抵抗力が強い。伝統的な和紙の原料として用いられ、雁皮、三椏、楮、マニラ麻などがある。

す【簀】竹などで粗く編んだもの。簀桁に置き紙料の水分を流し落とす役目をする。→すげた【簀桁】

すいりゅうし【水流紙】漉き模様の技法のひとつで、水滴で直線や曲線の縞状の模様をつくった紙。

すきあわせ【漉き合わせ】本来は、2種の紙料を重ね漉きしたもの。下貼りの場合は、骨縛り用の紙(骨紙)とべた貼り用の紙とを漉き合わせた紙をいう。

すきあわせし【漉き合わせ紙】漉き模様の技法のひとつで、2枚の紙の間にさまざまなものを漉き合わせた紙。

すきいれし【透き入れ紙】漉き模様の技法のひとつで、紙面に凹凸を与えて模様をつくった紙。

すきず【漉き簾】和紙の手漉きに使う簾。

すきぞめ【漉き染め】伝統的な和染めの手法を受け継ぐもので、紙料の靱皮繊維(雁皮・三椏・楮など)を叩解したのち、ネリと染料を加え漉き上げること。例外として、藍染め紙だけは原料が直接染め付けしにくいため、漉き上げた和紙を藍染めし、再び叩解して紙料に戻し漉きなおす。

すきどめ【透き止め】襖の下地が透けて見えるのを防ぐために貼るもの。

すぎまさぶち【杉柾縁】柾目の美しさを生かした赤味の杉の縁。

すきもよう【漉き模様】抄紙工程の中で、さまざまな技法で模様をつけること。繊維によって光沢や色などに変化をつけ、柔らかく模様を浮きだたせる。

すきやづくり【数寄屋造り】茶室、勝手、水屋などが一棟に備わった建物を言うが、茶室風の建物を指すこともある。

すくり一んいんさつ【スクリーン印刷】捺染印刷ともいう。型枠にスクリーン(紗)を張り、模様をやきつけ、スキージ(へら)で絵の具をこすって模様をつける。

すげた【簀桁】型枠に竹製の簀を張ったもの。抄紙の際に漉き槽(漉き舟)から紙料を汲み上げるのに用いる。

すなご【砂子】→きんぎんすなございく【金銀砂子細工】

すぷる一す【スプルース・SPRUCE】アラスカ産の針葉樹の一種。杉に似た肌合いで、木地縁に最近はよく用いられる。

すみいた【隅板】襖の骨組みを補強するために四隅につける板。燧板(ひうちいた)ともいう。

すみながし【墨流し】水面に揮発性の油を浮かし、その上に墨、あるいは染料を流してその模様を紙や布に吸着させてうつしとる技法

すらいでぃんぐどあ【スライディングドア】襖の英訳=slidingdoor

すりざん【摺り桟】引き形式の太鼓襖(坊主襖)の上貼りの保護と、すべりをよくするためにつける上下の桟

すんぽうぶすま【寸法襖】採寸して、その寸法に合わせて作る襖のこと。⇔きかくぶすま【規格襖】

すんぽうもの【寸法物】→すんぽうぶすま【寸法襖】

せきしゅうはんし【石州半紙】石見国(島根県)から産出する楮漉きの半紙。版画用紙、障子紙、襖の下貼り紙などに用いる。→したばり【下貼り】

せんだいし【仙台紙】茶チリを透き止める目的のために紫色に染色した下貼り用の紙。

そうもよう【総模様】襖紙の全面に模様をつけたもの。

そでもよう【袖模様】襖紙の右側、左側の片方にのみ縦に模様をつけたもの。

そりどめ【反り止め】反り止めは、一般下貼りとは異なって建て合わせ後、反りの加減を考慮して、予防的に貼るもので、必ずしもどの襖にも施すというものではない。和紙、またはハトロン紙など適当な幅に切って貼る。

た行

たいこぶすま【太鼓襖】=ぼうずぶすま【坊主襖】縁をつけず上貼りで周囲を包む襖。太鼓張り襖ともいう。このため、仕上がり寸法より大きい紙幅が必要となる。間中(3尺幅)の襖でも、幅広の襖紙を使わなければならないこともあるので、注意を要する。縁に邪魔されずにデザインしたいときに利点がある。茶室では引手は切引手を使うことが多い。表裏の上貼りが異なる場合には張力の差をあらかじめ考慮する必要がある。

だいようせきしゅう【代用石州】下貼りに用いる楮紙の一種。

たけくぎ【竹釦】竹製の釘。金釘にはない良さがある。和室建築では手のこんだ手法。襖では骨の組子と框とを接合するのに用いる。建て合わせの際、カンナによる寸法調整ができる。

たけなが【丈長】高さが5尺8寸を超える襖のこと。

たてあわせ【建て合わせ】下貼りの段階で、現場で寸法合わせをすること。

たてがまち【竪框】襖骨の周囲のものを框というが、そのうちの縦のもの。

たてくみこ【竪組子】襖骨の組子のうちの縦のもの。

たてこ【竪子】→たてくみこ【竪組子】

たてしげしょうじ【竪繁障子】=たてしげ【竪繁】縦方向に組子を多く配した障子。横に多い場合は「横繁」という。床の間の脇の書院などによく見られる。竪組子が7本以上あるものを柳障子という。繊細で上品な感じになる。⇔よこしげしょうじ【横繁障子】

たてしげしょうじ【竪繁障子】

たてひらぼね【竪平骨】骨の組子のうちの縦のもの全部に力子を使ったもの。→ちからこ【力子】

だみえ【濃絵】桃山時代を中心に栄えた彩色をほどこした絵。

ためずき【溜漉き】中国古来の紙漉きの技法。日本独自の流し漉きと違い、ネリを用いない。一枚ごとに簀桁の中の水を簾の間から自然に落として漉き上げる。襖に用いる手漉き和紙では、漉き模様の模様付けなどの際に用いることがある。→ながしずき【流し漉き】

だんし【檀紙】紙肌に細かい雲状の凹凸かあり、独特の重厚な味わいがある。現在は儀式や包装紙に使われることが多い。

たんばんぶすま【単板襖】襖骨の組子の上に下貼りの代わりに、1ミリ前後の薄い板を貼り、工程を簡略化した襖。

だんぼーるぶすま【ダンボール襖】典型的な量産襖。3層程度に重ねたダンボールを芯材に使った構造の襖。

ちからこ【力子】骨の強度を増すために用いる普通よりも太い組子。通常6.5分のものが用いられる。縦横全部にこれを用いたものを「平骨」、縦に3本、横に1本入れたものを「竪平骨」、縦に1本横に2本入れたものを「キの字」、横に1本入れたものを「割返し」などといって、入れ方によっていろいろな種類がある。「力骨」ともいう。

ちからぼね【力骨】→ちからこ【力子】

ちっぷぼ一るぶすま【チップボール襖】襖骨の組子の上に下貼りの代わりにチップボールを貼り、工程を簡暗化した襖。

ちゃうら【茶裏】→しんとりのこ【新鳥の子】

ちゃちり【茶チリ】襖の下貼りに用いられる紙。楮の繊維にクラフト紙などのチリを混ぜて漉いたもの。

ちゅうはな【中花】花塗りの中程度の塗り方。→はなぬり【花塗り】

ちゅうま【中間】高さが3尺から5尺ぐらいの襖。

ちょうじびき【丁子引き】刷毛の毛を櫛状にして、縞模様を引き染めすること。

ちりいりし【塵入り紙】漉き模様技法のひとつで、楮の黒皮などを漉き込んだ紙。

ちりおとし【塵落とし】切引手のこと。または角引手の下側が塵を落としやすいようになっている引手。

ちりおとし【塵落とし】

ついたて【衝立】移動できる仕切り。一枚の板、襖、障子などに台をつけたもの。目隠しや風よけのために発達したが、室内の雰囲気を演出する装置としても有効である。

つくろいばり【繕い貼り】=きりばり【切り貼り】上貼りや下貼りを部分的に補修すること。

でいびき【泥引き】金泥・銀泥を刷毛を用いて引き染めすること。

てかけ【手掛け】→ひきて【引手】

できあがりすんぽう【出来上がり寸法】→しあがりすんぽう【仕上がり寸法】

できぶすま【出来襖】→きかくぶすま【規格襖】

てすき【手漉き】紙を手で漉くこと。伝統的な紙の抄紙技法として、流し漉きと溜漉きに大別される。溜漉きは中国古来の技法で広く世界で行われているが、流し漉きは日本独特の和紙の抄紙技法である。和紙は伝統的には靱皮繊維(雁皮・三椏・楮など)を原料として、トロロアオイなどの植物性粘液(ネリ)を混入し、竹製の簀で繰り返しすくい上げ、紙層を重ねて漉く。⇔きかいずき【機械漉き】→わし【和紙】

てんちぶち【天地縁】襖の上(天)と下(地)に用いられる縁。上桟・下桟のこと。

てんぶくろ【天袋】本来は床脇の上部につく小襖をいう。今では部屋の上部に取り付けられる戸棚、窓の上部、押入れの上部につける小襖もいう。→じぶくろ【地袋】

てんぶくろ【天袋】

どうさ【礬水・礬砂】膠に明礬(みょうばん)を溶かしたもの。礬水を紙に下塗りすると紙の強度が増し、目止めになり、墨や絵の具がにじむことがない。このような処理を施すことを「礬水引き」という。

どうばり【胴貼り】下貼りの一工程。骨縛りをしたあとに行うもので打ち付け貼り、透き止めともいう。

とぎだし【研ぎ出し】→みがきだし【磨き出し】

とこのま【床の間】中世以降の和風住宅の座敷につく鑑賞用空間。床を一段高くし、正面に書画の軸、床板に花瓶、香炉、壷、卓、置物などを配し、住む人の趣味、思想を反映させる場。格式の高い空間であるから床を背にする席(床前)を上座とする。床の間が招客を応接するために重要なものとなったのは室町時代の茶の湯からである。もとは書院造りの貴人の座所と鎌倉時代の仏画をかけて礼拝する場とが融合したもの。床柱、床框、床板(畳床)、落とし掛け、綿板、印籠四分などからなる。種類は多く本床、蹴込床、踏込床、洞床、袋床、織部床、釣床、置床などがある。

とこわき【床脇】=わきどこ【脇床】正式の床の間は左右に書院と床脇がついて床構えが完成する。床脇には違い棚、天袋、地袋がある。書院は床の間への採光をたすけ、床脇はその補助つまり書画の保管、筆記用具の収納の意味があったと思われる。床脇の違い棚は数多くの組み合わせがあり、その意匠は設計をする人の腕の見せどころであって、名建築の品格に学ぶところが多い。

とって【取手】開き形式の建具の開閉のための金具。房をつけたものを用いることもある。

とびぐも【飛雲】漉き模様の技法のひとつで、最も古典的かつ伝統的なもの。

どぶ【ドブ】=どぶぶち【ドブ縁】引き違いなどの襖で、引手のつく方の竪縁をドブ縁という。これに対して重なり合う方の竪縁をマス縁あるいは重ね縁という。マスにくらべて見込みが細くなっている。

どぶ【ドブ】

とぶすま【戸襖】片面が板戸、片面が襖に仕立てたもの。

とりのこ【鳥の子】狭義の意味では雁皮の生漉き紙(本鳥の子特号紙)を指す。広義ではすべての和紙を意味する場合もある。ここでは、機械漉きの無地のものをいい、手漉きのものに「本」の文字を付して「本鳥の子」と称して区別する。→ほんとりのこ【本鳥の子】

とりのこすきもよう【鳥の子漉き模様】漉き模様襖紙のひとつ。本鳥の子漉き模様と違い、下地になる和紙を抄紙機で漉き、表の層(上掛け)の模様は手漉きと同様な技法で製作する。→ほんとりのこすきもよう【本鳥の子漉き模様】

とろろあおい【トロロアオイ】アオイ科の一年草。この根を砕くと粘性液がとれ、これをネリとよび、流し漉きには欠かせない。→ねり【ネリ】

な行

なかくみこ【中組子】→なかこ【中子】

なかこ【中子】骨の中に入っている組子のこと。普通、縦3本、横11本入る。「中組子」ともいう。

ながしこみもようし【流し込み模様紙】漉き模様の技法のひとつで、型枠を用いて紙料を流し込み、模様をつくった紙。

ながしずき【流し漉き】日本独自の手漉き技法。靱皮繊維(雁皮・三椏・楮など)の紙料にネリ(植物性粘液)を混ぜ、簀桁ですくい上げ、全体を揺り動かしながら紙層をつくり、簀桁を傾けて余分な紙料を流す・・・数回これを繰り返して厚さを調整する。→てすき【手漉き】

なかぬきしょうじ【中披き障子】→げんじしょうじ【源氏障子】

なつざしき【夏座敷】夏、戸や窓を開け放し、風を取り込み涼しそうに装った座敷。襖などは葦戸や御簾に取り替える。→よしど【葦戸】みす【御簾】

にけん【二間】→にけんよまいだち【2間4枚立】

にけんはん【二間半】→にけんはんよまいだち【2聞半4枚立】

にけんはんよまいだち【2間半4枚立】内法の幅が2間半の間に4枚の襖が入るもの。

にけんよまいだち【2間4枚立】内法の幅が2間の間に襖が4枚入るもの。

にまいだち【2枚立】柱と柱の間が2枚の襖で構成されるもの。

ぬのめし【布目紙】⇔らもんし【羅文紙】布目があらわれている厚い紙。

ぬりぶち【塗り縁】木地縁に対して、漆やカシューなどの塗料で塗ったものを指す。伝統的には漆を用いて、さまざまな技法で仕上げる。→きじぶち【木地縁】

ねこましょうじ【猫間障子】紙貼りの障子の内部に小障子をつけ上下あるいは左右に開閉ができるようにしたもの。とくに上下に開閉するものを「摺り上げ障子」または「雪見障子」という。猫間とは寝間からきた語でもとは寝室の換気のための工夫。最近はガラスを嵌め込み開放しないものもある。

ねこましょうじ【猫間障子】

ねり【ネリ】流し漉きの際に紙料を分散させ安定させるのに用いる粘剤。トロロアオイやノリウツキの根を砕いて樹液をとったもの。ネリの発見が和紙独自の製法を可能にした。本来は雁皮のもつ粘性を代用するために使われた。

は行

はく【箔】代表的なものとして、金箔、銀箔、プラチナ箔(白金)がある。金箔は銀を混入する割合によって青みがかった金色に変化する。純度の高いものから、赤金、青金(色吉)、水金(定色)などと呼ばれる。銀箔は経年とともに腐食作用により変色するが、金箔とプラチナ箔は変化しない。箔押しや金銀砂子細工に用いられる。

はくあかし【箔あかし】箔押しに用いる箔を、一時的に箔紙に貼ること。箔の取り扱いの容易さと損傷を防ぐために行う。

はくおし【箔押し】金箔などによる伝統的な加飾技法のひとつ。金・銀箔を紙や器物などの表面に貼付すること。

はけぞめ【刷毛染め】→はけびき【刷毛引き】

はけびき【刷毛引き】=はけぞめ【刷毛染め】刷毛を用いて紙を染めること。さまざまな技法がある。

はけめ【刷毛目】刷毛で紙を染める際にでる刷毛の引き跡。手引き独特の風合いになる。

ばしょうふ【芭蕉布】糸芭蕉の繊維を用いた織物。上質な襖紙としても用いられてきた。

はっぽうぷらすちっくぶすま【発泡プラスチック襖】ダンボール襖とともに典型的な量産襖。発泡スチロールなどを芯材に使った構造の襖。

はなぬり【花塗り】漆の塗り方の一種。上塗りをした後で研ぐ蝋色塗りとはちがい、単に漆などを塗り乾燥する方法。工程は簡単だがかえって熟練の技術を要する。黒塗り、朱塗り、潤み塗り、溜塗り、春慶塗り、梨地塗りなど、みな花塗りの種類である。黒塗りの中で塗立漆、上花漆、中花漆などにわけられる。

はにかむ【ハニカム】蜂の巣状のぺ一パーコア。

はばびろ【幅広(巾広)】間中(3尺幅)の襖と比べて幅の広いものの総称。二間半、三間などと呼ばれるものがある。

はりおび【貼帯】襖に貼る帯状の紙。引手中心のものは、引手まわりの汚れがめだたない長所もあるが、デザイン上から用いることも多い。

はりおび【貼帯】

ばれん【バレン】木版摺りの際、紙の上をこする用具。紙を重ねて作った皿形のものを竹の皮で包み、滑りをよくしたもの。

はんぶすま【半襖】高さが2尺から3尺までの襖のこと。

ぴ一すかこう【ピース加工】エアースプレー(エアーブラシ)を用いて、襖紙に色をぼかしてつける技法。

ひうちいた【燧板】襖の骨組みを補強し、隅じわを防ぐために四隅につける板。隅板ともいう。

ひきて【引手】襖を開閉する際に手を掛けるために取り付ける器具。手掛けとも呼ばれる。金属製や木製のものなどがあり、生地を生かしたものと化学的な表面加工や漆塗り仕上げなどをしたものもある。最近ではプラスチック製の安いものもある。→とって【取手】

ひきていた【引手板】襖の引手をつけるために、骨の間に嵌め込む板。

ひきてさわり【引手さわり】引手のまわりに別の紙や布を貼り、汚れを目立たなくするためにすること。これを引手さわりとか手ざわり、手当たりともいう。デザイン的に用いることもある。

ひきてさわり【引手さわり】

ひだりがって【左勝手】2枚の襖が引き違いになっているときに向かって左の襖が手前にあること。通常これは逆とされる。⇔みぎがって【右勝手】

ひっかけし【引っ掛け紙】漉き模様の技法のひとつで、俗に「ヒッカケ」と呼ばれる。三椏や楮の繊維を薄い金属板のへりに引っ掛け、湿紙にこれを付着させ模様を作った紙。

ひばた【樋端】敷居や鴨居にある溝を樋という。その高い部分を樋端という(低い部分は底)。溝が2本あれば樋端は3力所できるが、それぞれ室内から見て内樋端、中樋端、外樋端と区別する。通常樋端といえば中樋端を指す。「畦」とも呼ばれる。

ひばた【樋端】

ひょうぐ【表具】掛け軸の書画をとり囲む表装部分。本紙に裏打ちして補強するとともに装飾的な機能、壁に掛けて鑑賞できる機能、巻き込んで収納、保管できる機能を合わせもたせる。全体を天地に分け、その中間に書画の本紙を一文字とよばれる横布ではさみ、下部に軸木、上部に掛緒をつけて下げる。その形式に応じて真、行、草に分かれ、風帯のつく経仕立て、装飾性をもたせない文人仕立てなどがある。表具を仕立てる専門家が表具師で、現在では襖も製作する。

びょうぶ【屏風】折りたたみが可能な仕切り。紙または布を木の骨組みに貼り、周囲に木枠をめぐらせた襖状の仕切りを2枚、4枚、6枚と横につらね、交互に曲げて立て掛ける。2枚折りのものを二曲、4枚択りのもめを四曲、6枚折りのものを六曲といい、単独で用いるものを半双、2つを組み合わせて用いるものを一双と呼ぶ。六曲一双となると、6枚折り(6面)が2つで一つの画面を構成する。すなわち、12面もの横長の大作になる。金箔だけを貼った金屏風のように無地のもののほか書画の表装としての機能美ももっている。日本画の大作は屏風造りが多い。

ひらぼね【平骨】組子の全部を太い見付き(6.5分)のもので作った骨。総平骨、総平ともいう。

ひらぼねじゅうもんじひうちいたいり【平骨十文字燵板入り】見付き1寸1分の力子を縦横十文字に組んだ平骨に、四隅に燧板をいれた骨。組子骨ではもっとも丈夫で高級なもの。

ぴんぱくぎ【ピンパ釘】縁をつけるときにつかう頭の小さな釘。打付や天地の縁によく用いられる。

ふくろがみ【袋紙】袋貼りに使われる紙。石州半紙、桑チリ、茶チリなどの和紙をいう。

ふくろばり【袋貼り】=うけばり【浮け貼り】下貼りの最後の工程で、紙の周囲にだけ糊をつけて貼ること。内部は浮いた袋状になる。上袋、下袋とがあり、上袋には喰い裂きをした下貼り紙を用いる。上貼りを浮かせた状態で柔らかく見せ、また、貼り替えを容易にするために用いる。→ふくろがみ【袋紙】

ふさつきとって【房付取手】取手に房を付けたもの。仏間の開きなどによく用いられる。

ふさつきとって【房付取手】

ふすましょうじ【襖障子】古くは建具を総称して障子(そうじ)と言い、襖障子、明り障子、衝立障子などの種類がある。平安時代の障子は襖障子のことで、今日の襖をさす。→あかりしようじ【明り障子】

ぶっつけ【打付】ピンパ釘などで骨に縁を打ち付けること。縁の表面に釘頭が見えてしまう。廉価な襖に使われる。

ふとぶち【太縁】縁の見付きが6分5厘をこえるもの。8分や1寸のものがよく用いられる。

ふろさきびょうぶ【風炉先屏風】茶の湯で、広間などに風炉を置くとき道具畳の結界として用いる2枚折りの丈の低い屏風。風炉先ともいう。→びょうぶ【屏風】

ふさつきとって【房付取手】

へいけのうきょう【平家納経】平安時代の代表的装飾経。平清盛の命で平家一門によって製作され、厳島神社に奉納された。当時の加飾技法の頂点をきわめるもので、多彩な技法で装飾されている。国宝。

ぺ一ぱ一こあぶすま【ぺ一パーコア襖】襖の下地骨にぺ一パーコアを用いたもの。

べたばり【べた貼り】接着する全面に糊をつける貼り方。または全面に貼り込むこと。襖の下貼りの中間の工程でこの貼り方をする。

べにやぶすま【べニヤ襖】→いたぶすま【板襖】

ほうしょがみ【奉書紙】皺がなく純白できめの美しい紙。福井県武生市の産は有名。

ぼうずふすま【坊主襖】→たいこぶすま【太鼓襖】

ぼかしぞめ【ぼかし染め】濡れた刷毛の一部に色を挿し、譜調をつけた刷毛染めをすること。

ほぐ・ほご【反古・反故】書画などを書き損じた紙や不要になって破棄された文書のこと。薄く上質の和紙が多いため襖の下貼り紙として再利用された。今日ではほとんど入手できない。→したばり【下貼り】

ほぞ 木を組み合わせるとき、一方に作る突起のこと。他方にこの突起を入れる孔をうがって両者を合わせる。

ほぞ

ほそかわし【細川紙】埼玉県小川町が産地。語源は、紀州高野山山麓の細川奉書が小川町に伝えられて発達したことによる。下貼りに用いる紙の一種。楮を原料として漉いたもので強靱である。

ほそぶち【細縁】縁の見付きが6分5厘より細いもの。5分5厘や4分のものがよく用いられる。

ほねしばり【骨縛り】下貼りの工程で第1段階の貼り方。障子と同様に骨に濃い糊をつけ紙を貼る。骨縛り用の紙は、手漉き紙、茶チリ、桑チリなどの強い和紙。

ほねしばりおしばり【骨縛り押貼り】→うちつけばり【打ち付け貼り】

ほねすんぽう【骨寸法】襖の出来上がり寸法から縁の寸法を引いたもの。下地寸法とも呼ばれる。

ほねぶすま【骨襖】→くみこぶすま【組子襖】

ほりつき【堀付き】竪縁の框に取りつける面に、釘かくしに用いる折れ合い釘や木ネジのための溝が掘ってあるもの。

ほんとりのこ【本鳥の子】本来は雁皮紙をさし、その色合いが鶏卵の殻の淡黄色に似ているところから鳥の子と呼ばれ、和紙を代表するもの。手漉きのものには、「本」を鳥の子の語頭に付して機械漉きのものと区別する。→とりのこ【鳥の子】

ほんとりのこすきもよう【本鳥の子漉き模様】すべて手漉きによって漉き込み模様をつけたもので、主として三椏や楮などの原料で、流し込みなどのさまざまな技法により模様がつけられる。

ほんま【本間】→きょうま【京間】

ま行

まし【麻紙】麻の繊維を原料として漉いた紙。

ます【マス】=ますぶち【マス縁】引き違いなどの襖で、引手のつかない側に使われる縁のこと。出合い縁とも呼ばれる。樋端の分の隙間を少なくするために見込みが太くなっている。

まし【麻紙】

まなか【間中】内法幅1間の間に2枚の襖が入るもの。

まにあいし【間似合紙】摂津の名塩(西宮市)に産する特殊な土を混ぜて漉いた紙。多少青みがかったもので変色しにくい。葛布・芭蕉布などの裏打ちに用いられる。

みがきだし【磨き出し】あらかじめ銀泥や銀砂子を施した紙の裏に模様を彫刻した木版を置き、紙の表面を猪の牙で研ぎ、模様を浮き出させる技法。研ぎ出し、蝋箋(ろうせん)とも呼ばれる。

みぎがって【右勝手】2枚の襖が引き違いになっているときに向かって右の襖が手前にあること。いわゆる右前でこれが通常の形とされる。本勝手ともいう。→ひだりがって【左勝手】

みこみ【見込み】縁などの部材の厚さ(奥行)のこと。→みつき【見付き】

みこみ【見込み】

みす【御簾】すだれ。葦戸と同じように、夏、襖や障子などと入れ替え夏座敷として用いる。→なつざしき【夏座敷】

みずこししょうじ【水腰障子】水は「見ず」の意。腰板のない障子。足元まで明るくモダンな感じがする。下框を幅広くとって下部の安定感を補う。組子のデザインによってさまざまなパターンができる。

みずこししょうじ【水腰障子】

みずたまし【水玉紙】漉き模様の技法のひとつで、水滴で水玉の模様をつくった紙。

みずもみ【水揉み】和紙を染料で染め、濡れたままで揉み、揉皺に濃く染め付けをする技法。

みつき【見付き】縁などの部材の正面からみた幅。→みこみ【見込み】

みつまたし【三椏紙】三椏の繊維を原料として漉いた紙。雁皮紙とともに和紙を代表するもので、生漉きのものでは本鳥の子二号紙が代表的。

みなとがみ【湊紙】壁・襖の腰貼りに用いる紙。和泉国湊村で作られたことからこの名がある。

みのばり【蓑貼り】下貼りの中間の工程で、紙の框に貼られる部分にだけ糊をつけて上へ上へと貼ること。2枚が重なるものを二遍貼り、3枚が重なるものを三遍貼りといい最高八遍貼りまである。蓑のような重ね貼りとなるためこの名がある。

むしろびき【莚引き】莚(むしろ)や縄の上に紙を置き、刷毛染めすること。凹凸による染めむらができる。

めおこし【目起こし】=めおこしぬり【目起こし塗り】作意的に木の目を表すようにして塗った縁。

めしあわせぶち【召し合わせ縁】両開きのところに用いる片定規縁のこと。→じょうぎぶち【定規縁】

めはじきぬり【目はじき塗り】漆を塗る場合あらかじめ目止めをしてから塗ると平らに仕上がる。しかし木目を生かすために、あえて目止めをせずに直接塗る方法を目はじき塗りという。木目の部分だけが塗料をはじいた感じに仕上がる。

めひき【目引き】→めおこし【目起こし】

もみ【揉み】和紙を繰り返し揉んで皺をつくる技法。→きらもみ【雲母揉み】みずもみ【水揉み】

や行

よこがまち【横框】襖骨の上下の框。上を上桟、下を下桟という。

よこくみこ【横組子】襖骨の組子の横に組むもの。

よここ【横子】→よこくみこ【構組子】

よこしげしょうじ【横繁障子】=よこしげ【横繁】横方向の組子を多く配した障子。縦に多い場合は「竪繁」。普通竪組子は3本で横組子の間隔を87ミリほどにする。これは美濃紙の幅の3分の1にあたる。見た目をスッキリさせるために横組子を少し細めに作る。⇔たてしげしようじ【竪繁障子】

よしど【葦戸】葦簀(よしず)を張った戸。御簾と同じように、夏、襖や障子などと入れ替え夏座敷として用いる。→なつざしき【夏座敷】

ら行

らくすいし【落水紙】漉き模様の技法のひとつで、水滴で市松などの模様をつくった紙。楽水紙とは異なる。

らもんし【羅文紙】→ぬのめし【布目紙】

らんま【欄間】天井と鴨居、または長押との間に彩光・通風のために格子または透かし彫りの板を取り付けてある所。

らんま【欄間】

りょうさんぶすま【量産襖】大量生産を目的として作られる襖のことで、ダンボール襖と発泡プラスチック襖に代表される。

りょうし【料紙】詩歌などを書く用紙。主に鳥の子や麻紙などを用い、金銀砂子細工などで華麗に装飾したものもある。源氏物語絵巻の詞書きなどに見られる。

りょうじょうぎ【両定規】→じょうぎぶち【定規縁】

りんてんいんさつ【輪転印刷】巻き取りの原紙を使って、シリンダーの版で連続して印刷する方法。

ろうせん【蝋箋】→みがきだし【磨き出し】

わ行

わきどこ【脇床】→とこわき【床脇】

わし【和紙】わが国特有の紙。伝統的な手漉きによるものと、機械漉きによるものとがある。手漉き和紙は主として靱皮繊維(雁皮・三椏・楮など)を原料とするもので、鳥の子紙、半紙、奉書などがある。機械漉き和紙は主として、木材パルプ、故紙、マニラ麻などを原料とする。襖紙、障子紙、ちり紙、書道用紙などがある。→てすき【手漉き】わしふすまがみ【和紙襖紙】

わぶすま【和襖】→くみこぶすま【組子襖】

わりかえし【割返し】四分子の引手板の上の横組子に力子を用いた襖骨。

間違いやすい用語

【貼る】と【張る】
角川漢字用語解説によれば「張るとは物を引き伸ばして、長くしたり広くしたりすることの意で、弓を張る、網を張る、帆を張る」と書いてあり、また「貼るとは薄い平らなものを、表面に付けることの意で、ポスターを貼る、貼り紙、切手を貼る」などと用いる。常用漢字内では、貼ると張るを使いわけずに張るで統一している。

【縁】と【椽】
江戸時代から明治にかけて、専門家の間で、木でできている縁に、あて字として椽がしばしば使われた。この椽は、一部の学者の間でも使われたことがある。しかし、現在の日本の辞書を見るとフチの意味はなく、また社会的にも用いられない字となっており、縁を用いるのが望ましい。なお椽の音はテンで、「屋根の垂木」の意味で使われている。

【蝋色】と【呂色】
蝋色とは蝋色塗り漆のことで、無油の漆を用いる。一般的には磨き上げて艶を出す方法のことで、仕上がった表面が蝋のような、なめらかな肌をしているのでこのような呼び方をすると言われている。略した呂色という字はよく使われているが正しくは蝋色である。

【竪】と【縦】
襖の構造などで用いる場合、竪平骨、竪框など竪という文字を書いて縦の位置にあることを表わす。織物や糸などでは縦糸(経糸)、横糸(緯糸)を意味するときには、縦横の縦を用いる。

【木地】と【生地】
木地とは木材の地質のことで、ろくろびき・木彫などの細工に用いる材料の木を荒挽きしたものの意や、塗りをするための下地・指物等を表わす。生地は人工を施さない自然のままの質を表わし、木・布・金などの本質を示している。

下記の言葉は、何れも同じ意味で使用されている。
「燧  vs 火打」 「定規 vs 定木 vs 帖木」 「打子 vs 内子」 「弁柄 vs 紅柄」