HERITAGE LUX
ヨーロッパでは古城や古い教会など歴史的建造物を保存するために改修し、ホテルや図書館などの新しい施設に生まれ変わらせるプロジェクトが増加しています。このことから伝統を再解釈するマテリアルのニーズが急速に高まっています。これらの施設では、ただ古き良き伝統を追体験するのではなく、まったく新しい没入型体験を得るために、不思議さや啓蒙、暗闇などとともに感覚的な要素を大切にしています。
そこでこのブースでは豪華さと美しさ、装飾へのこだわりなどを示す色や柄、素材が集められました。最新のデジタルプリントや染色技法、織りの技術を用いて装飾的なパターンと魅力的な表面加工により、歴史と自然の美しさ再発見しています。
オランダのデザイナーBART HESS(舞台衣装、アカデミー賞舞台など)が手がけた「Grotto/洞窟」シリーズを中央に配し展示。ラテックススキンで作られたプリーツ状のオブジェは鍾乳石を連想させます。中にはマッサージチェアのような機械が仕込まれており、来場者がそこに横たわりラテックスの独特な質感とともに神秘的な空間を体全体で体感しました。
MAXIMUM GLAM
SNSでの発信が日常となった現代。生活やインテリアに喜びと表現の場を求める人は年々増加しています。彼らは演劇の世界観と華やかなショータイムの美学を重ね合わせ、クラフトとデジタルを掛け合わせることでアーティステイックなデザイン世界の融合を導き出します。
舞台衣装のように華やかで装飾過多なマテリアルをこれでもかと重ねて広げた展示会場。中央にはポールダンス用のステージも設けられ、日に何回か実際にダンサーがそこでショーを見せる演出も。
最新テクノロジーを駆使した様々なテキスタイルや壁紙は、グラム、グラデーション、スペクトラム、フェイクファー、パイルとフリンジ、ジャカード織り、そして非常に凝ったプリントものなど、「もっともっと」と新しさと刺激を求める消費者のニーズに応えます。
MULTI-LOCAL
世界の様々なLocal(地域)に着目しつつ、どんな文化的な影響も自由に垣根なく受け入れる現代性を様々な幾何学文様で示しています。ハイパーローカルはグローバル化し、伝統的な職人の技に敬意を払い、創造性と多様性を取り入れます。その地域に根ざしたローカルなスタイルは、国境や文化の垣根を超えて広がっています。
例えばある人から見ればアフリカンスタイルの幾何学文様が、日本人から見ると着物の伝統的なモチーフに見えたり、北欧デザインに用いられるカーペットの柄に見えたりもする。そこには普遍的なつながりと、国や民族によるアイデンティティの区別ではなく、どんな個性を持った人がそれらをインテリアとして楽しむかが重要であるということを示唆しています。部族や民俗的なものから幾何学的で抽象的なものまで、細工された様々な装飾的なパターンが世の中には沢山あります、それを自身の立ち位置(価値観)で選び、楽しむことが重要と提示されています。
FUTURE MATERIALS LIBRARY
2018年のダッチデザインウイーク(DDW in オランダ アイントホーフェン)でも紹介された最新のBIO DESIGNの観点や加工技術から生まれたリサイクル素材の展示。
オレンジや松の木の皮、トウモロコシの表皮、人毛など、普段廃棄してしまうものから作ったマテリアル。修復不可能な服を集めて水を使用しないなど最低限のエネルギーでフェルト加工を行ったアイリーン・フィッシャーによるリサイクル素材。リサイクルペットボトルのチップから作った建材やバクテリアなどの微生物の生命エネルギーを利用して組成したプロダクトなど、最新技術を用いて様々な素材を利用可能なマテリアルに転換できる可能性を示しています。
この展示はFranklin Tillスタジオによるもので「REMADE ― リサイクル」「BIOLOGICAL BYPRODUCT ― 副産物として出るものを資源に」「NATURAL ASSETS ― 自然に余っている、作りすぎているものを利用」「LIVING MATERIAL ― バクテリアなど生きているものを利用」と表示され、驚くような原材料から成る数多くのマテリアルが展示されました。
サスティナビリティな素材がスタンダードとなる時代はもうすぐそこまで来ているのです。
本コラムではインテリアの内装材にまつわる様々な情報を発信してまいります。国内の新しい製品情報はもとより、エンドユーザーの消費行動に関する変化や海外トレンドから得られるデザインのヒント、話題の建築などにも着目しご紹介してまいります。