リノベーションで明るい印象に大変身

街のお医者さんとして長く地元の人々に頼られてきた内科の診療所。大先生と呼ばれる院長先生のご子息が大学病院を退職されて、大先生と共に診療所を診ていく事に。それを機に大規模な改修工事をしたケースです。診察室を1つから2つへ増やす事による増床工事と内装材の一新が行われました。開口部を新たに設けることが出来ない構造の建物だったため、いかに室内を明るく開放的に見せるかの工夫が求められました。


まずは、空間構成。閉鎖的な壁で空間を仕切ることを出来るだけ避け、受付コーナーをRのデザインにする事で待合室から診察室へ向かう廊下への動線をオープンにしました。また、横に長い椅子を配置する事によって実際の空間より広く、奥行きのある空間に見せています。

ビタミンカラーで元気に明るく

待合室の椅子の張り地に「オレンジ」、キッズコーナーの壁面に「グリーン」と「イエロー」。アイボリーを基調とした明るい空間にスパイスとなるビタミンカラーを用いて、患者さんの気持ちを明るくする工夫をしています。このように強いカラーを複数用いるときは、色で空間がうるさく感じられては逆効果です。そこで、ビビットな色使いを少し和らげてくれるウォームグレー(暖かみのある色調のグレー)を合わせて空間に落ち着きをプラスします。

デザインをしなかった場所にも更なる工夫を

このクリニックでは、従来の病院ではあまり手を加えてこなかった場所にも敢えてデザイン要素を加えました。


例えば、診察室の壁面。通常何も無いフラットな壁となるデスク正面の壁にニッチ(飾り棚)を設け、照明も付けました。クロスもシンプルな白の無地ではなく、格子柄のライトグレーの壁紙と赤味のあるダークブラウンの壁紙でアクセントを付けています。イメージは機能的で落ち着きのある「書斎」です。診察室のデスク回りは、長い時間先生が過ごす場所。多くの患者さんを診る先生の仕事は重労働です。そこで患者さんだけではなく、お医者様にとっても心地良い空間となるよう、無機質なデザインを避けました。


次はX線室です。ここも通常では真っ白な空間がほとんどです。厚い鉄板に覆われたこの空間は狭く、閉鎖的で息苦しさを覚える患者さんも少なくありません。そこで、患者さんが目にする正面の壁面に「木立」をイメージした柄のクロスを張り、少しでも「息がつける」空間となるよう工夫しています。