今、日本では「eco/エコ」という言葉が巷に溢れています。各企業の広告のコピーに使われ、雑誌やテレビで特集が組まれる等、その言葉を目にしない日はありません。
では、今回紹介する「GREEN/グリーン」とは?
欧米の建築、インテリア業界で1990年代後半から使われだしたプロジェクトコンセプトの総称で、その意味は「環境を継続的な(持続可能な)目的を持って開発するプロジェクト」となります。
そして、このGREENという言葉は2000年に入って、環境に配慮した様々なプロジェクトのコンセプトキーワードとして広く一般化し、多くの人々の日常生活にも浸透てきたと言われています。
まずは欧米で実施されている様々なグリーンプロジェクトを紹介すると共に、日本でも求められているインテリア業界の新しい環境基準についてご報告します。
1. GREEN PROJECT ロンドン テムズ川沿いの再開発
1980年代から1990年代にかけて行われたテムズ川沿いの再開発。2000年代に入ってもその動きは継続し、多くの近代的ビルが建築されました。
ここでは環境に配慮したGREENをコンセプトとする最新の設計、デザインのビルの中から2つの建物をご紹介しましょう。
この一方にずれて変形したように見えるガラス張りの建造物は実はロンドン市庁舎。この特殊な形状は気象条件の悪いロンドンでも最大限日光を取りこみ、自然エネルギーを屋内で効率よく活用する為と言われています。
ロンドンの金融の中心地であるシティ・オブ・ロンドンにあるスイス・リ本社ビル。
その特殊な形状から、ピクルスに使用する小さなキュウリを意味する「ガーキン(The Gherkin)」とも呼ばれています。
この形状はビル周辺で起こる風の乱気流を押さえる役割を果たし、また同じ規模のタワービルが消費する半分の電力でまかなえるよう、様々な省エネルギー技術が採用され、2004年にスターリング賞を受賞。
2. GREEN DESIGN 拡大するアメリカのグリーンデザインとグリーンビルディング
アメリカでは2000年頃から建築業界で「GREEN」が重要キーワードとして注目され、西海岸のホテルやシカゴなどの大都市の公共施設や商業施設の設計で「GREEN」をコンセプトとするプロジェクトがスタート。地球環境問題がクローズアップされると共に高い注目を集めています。
「グリーンビルディング」とは、環境に配慮し、エネルギー消費を抑え、健康的でしかも利益を生む建築物の総称です。
今回は建物ではなく、都市の中のオーガニックガーデンの代表とも言えるプロジェクトを紹介しましょう。
シカゴの高層ビル群のすぐ近くにリソース・センターが運営するオーガニックな野菜を育てる農場があります。
住宅等の再開発地区として確保されていた土地をプロジェクトが開始されるまでの間、有効活用するために有機農法を実践する農場として誕生。このプロジェクトは、市の資産である土地をただ遊ばせるのではなく、都市景観を美化し、食育という役割を担っています。地元の子供達がここで農作業を体験し、新たな雇用も生み出しているのです。
ここで取れる美味しいトマトをはじめとする様々な野菜は、リッツ・カールトンホテルのダイニングなど複数の著名なレストランで評価され、食材として供給されてもいます。
3. LEED 日本のインテリア業界も注目。アメリカの環境評価システム
アメリカでは環境への影響を最小限に抑えながら、入居者やテナントにとって最大限のスペースを効率よく確保する総合的な設計(デザイン)ツールが存在します。
LEED(リード)と呼ばれるこれは、設計の評価システム(ガイドライン)であり(正式名称はLeadership in Energy and Enviromental Design)、現在、アメリカ国内における多くの商業施設でこのシステムが採用され、評価を受けることでその施設の不動産価値も上がるという現象を起こしています。
日本でも業界毎に環境に配慮した商品の開発や基準が設けられていますが、監督官庁の違い等によって統一された概念に基づくものではなく、バラバラにスタート、設定されたものが多く、その認知度及び実施プロジェクトへの採用率はまだまだ低いというのが現状です。
この問題を解決するひとつの手段として、このアメリカのLEEDを日本でも応用出来ないかという動きがインテリア、建築業界の一部で出始めています。
《LEEDとは》
□ LEEDのスタートは1998年
1998年に試験プログラムがスタート。2000年に新築物件のための本格的なシステムとして始動。
□ LEEDを運営、管理するUSGBC
アメリカの首都であるワシントンDCに本部を置く独立非営利団体United States Green Building Council(1993年設立)がデータを管理し、評価を与えている。
□ LEEDのシステム
1. 建築物をそのシステム評価基準に基づいて点数計算し、USGBCが認定するシステム
2. LEED AP(Acclaimed Professional)試験を受けることにより、LEED認定プロとしてUSGBCに登録される。この認定者がUSGBCへ提出する書類を作成、管理する。
3. LEED APには受験資格は一切ない。環境に関するエレメントは多種多様に渡り、業界、業種に区別はないという考え方から、過去の経歴や実務経験は一切関係なく、誰でもが受験出来る。
□ LEED Certification Levelプロジェクトの認定レベル
最高基準の数値を獲得したものから順に「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」「認定」となる。
「認定」レベルで27点が必要とされ、これだけでも大変、経済効果が大きいと言われる。
□ LEED Commercial Interior(CI)点数評価基準とその内容
1. Sustainable Site継続的に使うための場所の選択
2. Water Efficiency水の使用に関する効率
3. Energy and Atmosphereエネルギーと大気
4. Materials and Resources資材と原料
5. Indoor Environmental Quality室内環境
6. Innovation in Design独創的なデザインと設計
本コラムではインテリアの内装材にまつわる様々な情報を発信してまいります。国内の新しい製品情報はもとより、エンドユーザーの消費行動に関する変化や海外トレンドから得られるデザインのヒント、話題の建築などにも着目しご紹介してまいります。