Maison & Objet Paris 2021より WHAT'S NEW ! “ LEISURE ” に注目
毎年、フランスのパリで開催されるインテリア見本市 Maison & Objet Paris。私は毎年1月展に取材とリサーチで訪れている。その展示会の様子はこのサイトの前身時代から度々コラムにアップし、展示会の様子や最新トレンド情報をリポートしてきた。
2022年1月も取材のためパリに飛ぶ予定であったが、COVID-19のオミクロン株の感染拡大で展示会は急遽中止に。私のエアチケットは残念ながら無駄になってしまった。
本来であれば自身の目で見て撮った写真で最新のインテリア情報をお届けしたいのだが、それが叶わぬ今、昨年(2021年)秋に約1年半ぶりに開催されたMaison & Objet Paris 9月展の画像と“ WHAT'S NEW ! ”ブース製作者の言葉から、インテリア・トレンドの傾向を読み解いてみよう。
Maison & Objet Parisには “ WHAT'S NEW ! ”という最新の注目デザインを3人のトレンドセッターが紹介するブースがある。
2021年の9月展では“SHARE”と“LEISURE”という2つのテーマで計6つのブースが作られていた。
今回は “LEISURE” について取り上げる。
コロナ禍で変化した “LEISURE” 余暇の時間
“TO BE HOME” by Elizabeth Leriche
私が毎回一番に注目しているArtistic Directorであり、フランスのクラフトマンシップのレベルアップと広報にも尽力しているエリザベス・レリッシュ。
今回彼女が掲げたテーマは「TO BE HOME」。
穏やかでソフトで幻想的なモノトーンのグラデーションが美しい瞑想ルーム。そこにはゆったりと穏やかな気持ちになるために必要な小物、ベンチやクッション、肌触りの良い素材などが並ぶ。
シンプルで機能的で楽しい文房具が並ぶライティング・スペースでは、カリグラフィーやタイポグラフィーをテーマにした内装でオフィスへの回帰を提案。
そして、工作や手芸、趣味を追求するアトリエ風空間ではDIYの楽しみを様々なキットで表現。ガーデニングコーナーでも美しく洗練された道具類一つ一つに、作業する喜びを見出した。
エリザベス・レリッシュは「このテーマは、パンデミック以前に始まったものであるにもかかわらず、私たちが経験していることと共鳴しているのです。家の内部性、多孔性を見せたかったのです。そして、みんながこの分野に投資するほど、この家は好調だ。"革命 "ではないけれど、これらのモノに新たな "眼 "を向けているのです。私たちにエネルギーを与えてくれます。」と語った。
環境に配慮したPROTECTについて考える
“TO PROTECT” by François Bernard
フランソワ・ベルナールは「TO PROTECT」をテーマに展開。彼はこだわりの日用品のセレクションを示し、それに保護(Protect)することを提案する。自転車やヘルメット、巣箱と餌箱、ブラシ、エプロン、鍋敷き、水筒、コンピュータケース、反射板、傘などを有効ボードやゴムバンドを使って展示。「私たちは自分自身や地球、動物、家、持ち物などに対して負うべき責任がある」と語る。「カーキ、オレンジ、クロムなどの楽しい色、天然素材や技術的な素材など、環境に配慮した多様な機能が共存を促す」と伝えた。
フランソワ・ベルナールは「これらの日用品は、私たちが身の回りに置いておくのが好きなもの、あるいは贈り物として贈るのが好きなものです」と言い、「それらは保護するものでありながら、防御するものではありません。個人的でありながら親しみやすく、私たちを互いに結びつけてくれます。一週間のうち、毎日を魔法のようなものにしてくれる超実用的なものなのです。」
人とモノ、情報との関わり方が大きく変化し、デザインが変わる
“TO CONNECT” by François Delclaux
フランソワ・デルクローは「TO CONNECT」をテーマに、「コネクテッド・オブジェクト、テクノロジー、音楽などの世界の最新動向」に着目した。そしてそのブースデザインは2021年後半にパリの話題の新店舗でも使用された注目カラー、明るく鮮やかなオレンジと冴えたブルー、シルバートーンで彩られた。
リュックやペンなどの文具類など日常で使用、携帯するものや身につけるもの。ワイヤレス充電やウェブカメラ用ライトなど、私たちのテレワークスペースやスマートフォンに装備するものがUSBキーを模ったようなカラフルな什器の上に一点一点貴重品のように並ぶ。
「"モビリティ(機動性) "も "コネクテッド "(密接)になっていく」との考えが示され、USBソケットを搭載したスーツケースや、GPSを搭載したラゲージも展示。
「物理的なものであれ、デジタルなものであれ、これらのコミュニケーション・インターフェースには共通の美学があります。ライトグレー、ミニマリズム、日本的なライン...新しいエレガンスが優先されています。」とフランソワ・デルクローは語った。
ワクチン接種が世界各国で進んで、近いうちにコロナ以前のように自由に世界中を旅することができるようになるかもしれない。そう考えてた2021年の秋。でもそれ以前は、日本よりも厳しい行動制限が実施された国も多かったヨーロッパでは、かなりのフラストレーションが溜まっており、少しでも心身ともに健康な暮らしを取り戻そうと様々なアイデアがSNSなどを通して発信されていた。そんな中で生まれたテーマが今回の “LEISURE” だったのではないだろうか。3人のディレクターそれぞれの視点で「今」を切り取り、デザインが果たす役割と可能性を示していたように私は思う。
その後一転してCOVID-19は第6波となって世界を再び覆い、1月展は大変残念ながら3月末に延期された。
3月に開催される2022年最初の展示会では、また新しいデザイントレンドの切り口「NEW LUXURY」が予告されている。新しい時代の「LUXURY(贅沢)」とは何か。
ぜひその様子もご紹介したい。
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Maison & Objet Paris 2021 9月展
会期:2021年9月9〜13日
https://www.maison-objet.com
本コラムではインテリアの内装材にまつわる様々な情報を発信してまいります。国内の新しい製品情報はもとより、エンドユーザーの消費行動に関する変化や海外トレンドから得られるデザインのヒント、話題の建築などにも着目しご紹介してまいります。