釘などを使わず仕上げる繊細で美しい匠の技
組子とは障子や欄間、書院などの建具に使われる細かい部材のことで、一般には桟と呼ばれるものよりも細い部材のことを指します。組子細工とは切り込みを入れた細い桟を釘やビスなどの金物を使わずに手作業で組み合せ、菱形や六角形、格子を基本として美しい文様を組み付けたものです。その美しさは建具の中でももっとも緻密で繊細。古くは鎌倉時代からともいわれるこの技術は長く日本の職人たちによって磨き上げられ引き継がれてきました。
多種多様な文様パターン
組子のデザインには、「麻の葉」などのように菱形を基本に組み合せ六角形をベースとしたものと縦横の水平、垂直を基本にした格子状のものがあります。
デザインはその組み合わせにより数百以上にもなり、幾何学文様の美しいデザインから、富士山や水辺などの風景や動植物を表したものまで様々です。
木が本来持つ個性で色柄が生まれる
組子は針葉樹を主に材料とし、中でも檜が多く用いられていますが、木には一本一本個性があり木肌の色も違います。それらの特性を生かして、古くから塗料などを使わずに木本来が持つ色の違いを利用して文様に変化をつける技法が発達してきました。赤、緑、白など微妙に変化する木の色を最大限に利用し、表情豊かな仕上がりに。
伝統から日常へ。組子の新しい使い方
古くから日本各地にその伝統と技が伝えられてきた組子細工。一般の家庭から和室が減少し、組子を用いた建具が無くなりつつある今、その伝統技法を何とか継承していこうと様々な取り組みが行われています。
最高級の素材と技法で作られた何百万円もする高級欄間や衝立もありますが、もっと身近な形で組子に触れてもらおうという考え方から、コースターやトレーといったキッチン小物からスピーカーや照明用シェード、オブジェといったインテリア小物への転用が見られます。生産体制や価格設定、販売ルートの確立など、それらにはクリアしなければならない問題は残っているものの、日本人の心に響く美しさがそこにはあり、現在のライフスタイルの中でも是非使ってみたいアイテムがいくつもあります。
そして、一番オススメしたいのが、和室以外のインテリア空間での使用です。「組子=和」という思い込みが、私を含むデザイナーや建築家の発想を狭めてしまっているのではないでしょうか。幾何学模様からなる組子のデザインは、見方を変えればモダンな文様と言えます。サイズやパーツの組み合せをどのようなバランスで取るか、そこにこだわれば、現在のライフスタイルに合った洋式の住空間でも大活躍してくれる大変魅力的なデザインモチーフ、素材と成りうると思うのです。例えば間仕切り壁のアクセントとして壁の一部に組込んだり、ウォークインクローゼットの扉デザインに落とし込むなどすれば新しい何かが生まれるかもしれません。
環境問題が叫ばれる今だからこそ、日本の木材市場の活性化や人にやさしい自然素材の利用などの観点からも今一度、美しい日本の素材や技術に目を向けてみせんか?
本コラムではインテリアの内装材にまつわる様々な情報を発信してまいります。国内の新しい製品情報はもとより、エンドユーザーの消費行動に関する変化や海外トレンドから得られるデザインのヒント、話題の建築などにも着目しご紹介してまいります。