ここ数年、大胆な色柄の壁紙を効果的に使って空間を彩る“アクセント・クロス”使いが注目を集めています。分譲物件のモデルルームやホテルで素敵なアクセント・クロスを使った部屋を見る機会が多くなりました。また、賃貸物件でもデジタルプリントで可能になった壁面いっぱいの大柄アクセント・クロスを使うケースも。個性豊かな物件が若者を中心に受けています。空間を彩り豊かに演出してくれる壁面のアクセント使いはアクセント・ウォールと言います。手軽に、そして以外と安価に空間のイメージチェンジが図れるアクセント・クロスを試してみましょう。

アクセント・クロスのススメ

空間のイメージをガラッと変えたい時、リフォームする時、新築する時、壁紙を選ぶ時迷ったら、一番目に留まる核となる壁一面にだけ大胆な色柄のクロスを貼ってみましょう。見違える様に空間がアップグレードすることでしょう。一面だけであれば色柄の印象が強いクロスでもうるさくなり過ぎることはありません。ただ白い無地の壁紙だけの時よりも空間にリズムと奥行が生まれ、大きな素敵な絵をかけた時のように空間が華やぎます。また、一面だけであれば部屋の家具をすべて動かす必要が無いので、貼り替え工事も短時間で済みコストも抑えられます。

ベッドヘッド側壁面に太い白黒ストライプを使う事例 Hotel Fabric/Paris
ベッドヘッド側壁面に太い白黒ストライプを使う事例 Hotel Fabric/Paris

海外ホテルに学ぶアクセント・クロスのテクニック

パリでは毎年、彩り豊かで個性的なアクセント・クロスを上手に使ったホテルがオープンします。私は仕事で毎年パリを訪れますが、その度に新しいホテルに宿泊し、取材をしてその色柄の大胆さや空間の作り方に刺激を受けています。

日本ではデザイン性の高いホテルは“非日常”の空間で、一般住宅の参考になるのかしら?と思う方もいるでしょう。けれどここ数年のパリで話題になるホテルは、自宅でくつろぐようにリラックスして欲しいというオーナーの意向もあり、住宅専門に仕事をしていたデザイナーが抜擢され、ハイクラスホテルの客室をデザインするケースもあるのです。別荘のデザインを得意とするデザイナーがパリ市内の新しいホテルで“くつろぎ”をテーマに肩肘はらないテイストでデザインする事例もあります。それらのデザインの中には、今すぐ自宅の参考に出来るテクニックが詰まっています。

ポイントは、アクセント・クロスを使う場所とコンフォーターケースやベッドヘッド、カーテンなどのファブリックスとのコンビネーション。施工場所は寝室であればベッドヘッド側の壁面がお勧めです。ベッドヘッドの色やベッド・ファブリックスとの色の組み合わせを参考にしてみましょう。壁面と同系色でまとめる方法、全く違う色を組み合わせてコントラストを楽しむ方法などがあります。コーディネーションを工夫するとそれだけで部屋のデザインがワングレードアップします。柄で冒険するのが不安な方は、まずはアクセントにしたい色をチョイスしてプランしてみましょう。

幾何学模様をベッド・ファブリックスにも使ってコーディネーション Hotel ADÈLE & JULES/Paris
幾何学模様をベッド・ファブリックスにも使ってコーディネーション Hotel ADÈLE & JULES/Paris
シックなグレーのクロスにピンクを合わせてエレガントに Hotel ADÈLE & JULES/Paris
シックなグレーのクロスにピンクを合わせてエレガントに Hotel ADÈLE & JULES/Paris
墨絵のようなモダンな壁紙とグレーのカーテンにグリーンを加えてアクセント Hotel ADÈLE & JULES/Paris
墨絵のようなモダンな壁紙とグレーのカーテンにグリーンを加えてアクセント Hotel ADÈLE & JULES/Paris
アイスブルーにイカット柄でエスニックテイストをプラス Hotel ADÈLE & JULES/Paris
アイスブルーにイカット柄でエスニックテイストをプラス Hotel ADÈLE & JULES/Paris
グリーンの同系色でまとめた客室 Hotel ADÈLE & JULES/Paris
グリーンの同系色でまとめた客室 Hotel ADÈLE & JULES/Paris
ダークブルーの無地でレトロシックな印象に Hotel Paradis/Paris
ダークブルーの無地でレトロシックな印象に Hotel Paradis/Paris

大胆な具象柄でドラマチックに変身

リアルな魚模様のクロスで大胆にドラマチックに HOTEL MATHIS PARIS/Paris
リアルな魚模様のクロスで大胆にドラマチックに HOTEL MATHIS PARIS/Paris
大柄のトロピカル柄に黄色をプラスし明るくカジュアルに Hotel ADÈLE & JULES/Paris
大柄のトロピカル柄に黄色をプラスし明るくカジュアルに Hotel ADÈLE & JULES/Paris

海外のホテルでは大きめの具象柄を大胆に使う事例も多く見られます。最近では日本でもデジタルプリントを使った大きな図柄の壁紙が増え人気が高まっています。部屋で一番印象に残る壁面(一般的には入り口から見て正面に近い壁をフォーカルポイントとしてアクセントにします)に思いきって大胆な柄を配してみてはどうでしょうか。その場合、部屋の使用目的に合わせて柄のテイストや色をチョイスしましょう。リラックスしたい部屋では真っ赤などの興奮色は避け、シックな色合いや柔らかい色、寒色系を使った壁紙にすると柄が個性的でも落ち着ける部屋になります。元気になりたい、アクティブな印象にしたい部屋ではビビットなビタミンカラー(オレンジや黄色、グリーンなど)を使うとより軽快で明るい印象になるでしょう。

また、具象柄の中には本物の木目パネルやブリックタイルに見えてしまうトロンプロイユ柄(騙し絵モチーフ)もあります。本物を使うと高い工事費がかかる素材でも、壁紙であればローコストでその素材を使ったように見せる事が可能です。最近のプリントは本当に技術が高いので、リアルで安っぽさはありません。

絵画タッチの壁紙と黄色の壁クロスの組合せ HOTEL MATHIS PARIS/Paris
絵画タッチの壁紙と黄色の壁クロスの組合せ HOTEL MATHIS PARIS/Paris
ホテル内のダイニングエリアでの印象的な壁紙使い Hotel Paradis/Paris
ホテル内のダイニングエリアでの印象的な壁紙使い Hotel Paradis/Paris
ホテルのラウンジで使われている木製パネル風壁紙 Hotel Paradis/Paris
ホテルのラウンジで使われている木製パネル風壁紙 Hotel Paradis/Paris

意外な場所にもアクセント・クロスを

皆さんの家の廊下の壁の色は何色ですか?多くの家ではシンプルな白の無地ではないでしょうか。でもご覧下さい。パリのホテルでは廊下であっても色や柄を大胆に使って、目に楽しい空間に変身させています。廊下の先にある部屋と同じ壁紙を使用したり、深く濃い無地の壁紙を一面に使うことで、モダンでスタイリッシュな印象にすることも出来るのです。ただ通るだけの通路ではなく、アクセント・クロスを使い、そこに素敵なアートフレームを飾れば、立派なデザイン性の高い空間に生まれ変わります。ぜひ廊下やエントランス、トイレなど小さな空間にもアクセント・クロスを効果的に使ってみましょう。

ダークグリーンと黒い額縁のアートがモダンに演出 HOTEL MATHIS PARIS/Paris
ダークグリーンと黒い額縁のアートがモダンに演出 HOTEL MATHIS PARIS/Paris
柄の中にある黄色に合わせて色をふんだんに使った廊下 HOTEL MATHIS PARIS/Paris
柄の中にある黄色に合わせて色をふんだんに使った廊下 HOTEL MATHIS PARIS/Paris
クラシックな孔雀柄の紙クロスにブラケットライトを合わせた通路 Hotel Paradis/Paris
クラシックな孔雀柄の紙クロスにブラケットライトを合わせた通路 Hotel Paradis/Paris

アクセント・クロスを効果的に使ったリノベーション

数年前、都内のマンションのリノベーションで私がデザインをした物件では、各部屋に印象的なアクセント・クロスを使いました。高い天井でしたので、縦に伸びるストライプ柄やまっすぐ伸びる白樺の木立ちのような柄を採用し、その高さを活かすよう空間デザインをしています。このように壁面は空間の中で大きな面積を占めるので、たとえ一面であったとしても柄が持つ特性が印象に残り、空間に高さや広がり、奥行感を出すことが可能になります。

これからリフォームや新築で家のデザインを考える人は、是非アクセント・クロスを効果的に使って空間を個性的に演出してデザインを楽しんでください。

縦ストライプの壁紙を使って天井の高さを強調したリビングルーム KM邸リノベーション/東京
縦ストライプの壁紙を使って天井の高さを強調したリビングルーム KM邸リノベーション/東京
天井まで伸びる白色の木立ち、シルバーの洋梨柄がアクセント KM邸リノベーション/東京
天井まで伸びる白色の木立ち、シルバーの洋梨柄がアクセント KM邸リノベーション/東京
完成したベッドルームの様子 KM邸リノベーション/東京
完成したベッドルームの様子 KM邸リノベーション/東京